問 題
50歳男性。糖尿病(グリメピリド錠にて加療中)。10年前にS状結腸がんⅠ期T1軽度浸潤と診断され、内視鏡的粘膜切除術(EMR)を受けた。定期検診のため、かかりつけ医を受診し、以下の投薬指示が出された。
前日21時より絶食し、検査当日7時より溶解液2Lを1時間あたり約1Lの速度で経口投与。
注:1袋を水に溶解して2Lとした溶解液の電解質濃度はNa+125mEq/L、K+10mEq/L、Cl–35mEq/L、HCO3–20mEq/L、SO42-80mEq/Lである。pHは約8.0、浸透圧比は約1である。
問218
この経口腸管洗浄剤は等張な電解質溶液であり、大腸の機能を利用した薬剤である。大腸の機能に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
- 大腸の粘膜には絨毛があり、そこから栄養の吸収が行われる。
- 大腸では水は吸収されるが、電解質は吸収されない。
- 結腸粘膜での水の吸収は、Na+の能動輸送で生じる浸透圧差により起こる。
- 大腸の運動は、副交感神経の興奮により抑制される。
- 大腸の内容物の肛門側への移送には、ぜん動運動が関わる。
問219
この経口腸管洗浄剤を服用するにあたり、患者に対して薬剤師が服薬指導する内容として、適切なのはどれか。2つ選べ。
- 可能であるならば、1時間あたり2Lの速度で服用してもかまいません。
- 服用しにくい場合でも、他の飲料水と一緒に服用しないでください。
- 2Lの溶解液が多いと感じる場合、1袋を水に溶解して約1Lとし、服用してもかまいません。
- 服用中に腹痛の症状が現れた場合には、服用を中止し、ただちに受診してください。
- グリメピリド錠は、本剤と同時に服用してもかまいません。
正解.
問218:3, 5
問219:2, 4
解 説
問218
選択肢 1 ですが
記述は小腸についてです。よって、選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ですが
大腸は、水分やミネラル吸収を担います。「電解質は吸収されない」というのは明らかに誤りです。よって、選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 は、正しい記述です。
選択肢 4 ですが
「抗コリン剤で便秘」を思い出せば明らかに誤りと判断できます。大腸の運動が抑制される というのは便秘につながると連想できます。そして、抗コリン剤の作用は Ach 受容体遮断です。これは副交感神経系の抑制につながります。
以上より、副交感神経系の抑制で大腸の運動が抑制されて便秘 とわかります。副交感神経系の「興奮」で大腸の運動抑制ではありません。よって、選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 は、正しい記述です。
以上より、問218 の正解は 3,5 です。
問219
選択肢 1 ですが
本剤の投与により、腸管内圧上昇による腸管への負担があるため短時間での投与は避けます。よって、選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 は、正しい記述です。
他成分や香料が混ざると浸透圧の変化などが起こりうるため避けます。
選択肢 3 ですが
濃度が変わってしまうので不適切です。よって、選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 は、正しい記述です。
選択肢 5 ですが
糖尿病薬については、血糖コントロールの観点から検査当日の食事摂取後より服用を行います。よって、選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 2,4 です。
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