尿崩症(視床下部、下垂体)とは、バソプレシンの産生や作用の障害により、腎集合管における水の再吸収が正常に働かず、多尿となる疾患のことです。
尿崩症は、原因により中枢性と腎性に分類されます。中枢性尿崩症とは、バソプレシンの産生や分泌能の低下が原因である尿崩症です。中枢性尿崩症は、さらに特発性、続発性、遺伝性に分類されます。
特発性尿崩症とは、原因が不明(自己免疫性?)の尿崩症です。(約40%)続発性尿崩症とは、頭部外傷などにより引き起こされる尿崩症です。(約60%)遺伝性尿崩症は、Wolfram 症候群などにより引き起こされる尿崩症です。(約1%)
中枢性尿崩症の治療は、デスモプレシン点鼻によるホルモン補充療法などが行われます。また、カルバマゼピン、クロフィブラート、クロルプロパミドが、バソプレシンの分泌促進や、作用の増強などを意図して用いられることもあります。
腎性尿崩症とは、バソプレシンの分泌は正常ですが、腎集合管のバソプレシン受容体の変異が原因でバソプレシンに反応しなくなることによる尿崩症です。腎性尿崩症はさらに、先天性と後天性に分類されます。先天性の腎性尿崩症とは、バソプレシン2型受容体遺伝子や、水チャネル遺伝子の変異による尿崩症です。後天性の腎性尿崩症とは、高Ca血症などの疾患に伴う尿崩症です。
治療薬として、チアジド系利尿薬やプロスタグランジン(PG)生成阻害薬が用いられます。尿崩症で「多尿」なのに「利尿薬」というのは違和感があるかもしれません。以下補足します。
チアジド系利尿薬の作用機序のメインは、遠位尿細管における Na+、水の再吸収抑制です。しかしバソプレシン障害により、そもそもこの部分の再吸収は抑制されています。そして、近位尿細管における Na+、水の再吸収促進作用の方が優勢に働くことで、結果的に尿量が減少することが知られています。
この近位尿細管における作用促進に関しては、より詳しく見ると、利尿薬投与→わずかに尿量上昇→全身血液循環量減少→レニンーアンギオテンシン系の活性化→近位尿細管での再吸収上昇 という流れによる、二次的な尿量減少とのことです。
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