key words
複合体Ⅰ→ロテノン
複合体Ⅲ→アンチマイシンA
複合体Ⅳ→シアン化、アジ化物
脱共役剤→2,4 ジニトロフェノール、バリノマイシン
酸化的リン酸化阻害→オリゴマイシン
電子伝達系における「電子がどのように伝達されていくのか」という疑問解明のために多くの阻害物質が用いられました。様々な生化学的実験に現在も用いられているものもあります。
電子伝達系を阻害する ということはATP 産生を阻害する ということを意味します。代表的な ATP 産生阻害薬について、電子伝達系の構造と関連して以下にまとめます。
複合体 Ⅰ に働きかけて、次の補酵素 Q への電子伝達を阻害するのが、ロテノン です。
フェニルプロパノイド に分類される化合物で、植物由来の成分として発見されました。農薬 などに用いられます。
複合体 Ⅲ に働きかけて電子伝達を阻害するのが、アンチマイシン A です。
微生物由来の 抗生物質の一種です。
複合体 Ⅳ にはたらきかけて、酸素への電子伝達を阻害するのが、シアン化物(CN–)、アジ化物(N3–)、CO、H2S などです。
その他に、複合体とは関与しないけれども、ATP 産生を阻害する物質もあります。まず、脱共役剤として作用する 2,4 ジニトロフェノール です。この物質は、H+ の濃度勾配を消失させることにより ATP 産生を抑制します。また、やはり脱共役剤として作用するのが、バリノマイシンです。こちらは、ミトコンドリア内膜でイオンを通過させる という作用により、H+ 勾配を消失させます。それぞれの構造は、以下になります。
次に、酸化的リン酸化を阻害する物質として、オリゴマイシンが知られています。これは、ATP シンターゼ に作用し、膜間腔からマトリックスへの H+ 流入を阻害することで、ATP 産生を阻害します。
(オリゴマイシンには、A,B、、、といった細かい違いがあり、ここでは A の構造を例としてあげています。)
ここまでの記述で「ATP 産生阻害物質は、どれも電子伝達系と関連する」という印象を持つかもしれません。しかし生物には、ほぼ例外なく、例外が存在します。補足のために、1例をあげると、ボンクレキン酸 という抗生物質は「ミトコンドリア内膜で生じた ATP をミトコンドリア外に輸送する」『ATP/ADP交換体』 を阻害することにより、ATP 産生を阻害します。
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