気管支喘息とは、気道粘膜における慢性炎症を原因とした呼吸困難を繰り返す病態のことです。気道狭窄が生じること及び、アレルゲンによる刺激に対する感受性が強くなっているという特徴があります。
気管支喘息治療薬は、大きく3つに分類されます。
1つめは、気管支拡張薬です。狭くなった気管支を拡張します。2つめは、ステロイド薬です。炎症反応を抑制することによって抗喘息薬として機能します。3つめは、抗アレルギー薬です。アレルゲンに対する反応を抑制することにより、発作を抑えます。それぞれの薬の作用に基いて、気管支喘息薬は 9 つに分類されます。
ⅰ.β 刺激薬
ⅱ.キサンチン誘導体
ⅲ.吸入用抗コリン薬
ⅳ.ステロイド
ⅴ.ケミカルメディエーター遊離抑制薬
ⅵ.LT(leukotriene)受容体遮断薬
ⅶ.TX(thromboxane)合成酵素阻害薬
ⅷ.TXA2 受容体拮抗薬
ⅸ.Th2 サイトカイン阻害薬
ⅹ.H1 拮抗薬
ⅰ.β 刺激薬
このタイプの代表的な薬は
・アドレナリン
・エフェドリン
・イソプレナリン(プロタノール)
・トリメトキノール(イノリン)
・サルブタモール(ベネトリン)
・テルブタリン(ブリカニール)
・プロカテロール(メプチン)
・サルメテロール(セレベント)
・フェノテロール(ベロテック)
・ツロブテロール(ホクナリン)
・マブテロール(ブロンコリン)
・クレンブテロール(スピロペント)
・ホルモテロール(アトック)
などが挙げられます。
アドレナリン、エフェドリン、イソプレナリン、トリメトキノール、サルブタモール、テルブタリン、プロカテロール、サルメテロール、フェノテロール、ツロブテロール、マブテロール、クレンブテロール、ホルモテロールは、β2 刺激薬です。
副作用を回避するため、β2 受容体への選択性をより高めた薬が開発されてきました。ツロブテロールは、テープの形で経皮吸収薬として用いられます。
ⅱ.キサンチン誘導体
このタイプの代表的な薬は
・テオフィリン
・アミノフィリン
などが挙げられます。
テオフィリン、アミノフィリンは、キサンチン誘導体です。ホスホジエステラーゼを特異的に阻害することにより、気管支平滑筋の cAMP を増加させます。それにより、気管支平滑筋の弛緩が引き起こされます。これは結果的に気管支の拡張をもたらします。
ⅲ.吸入用抗コリン薬
このタイプの代表的な薬は
・イプラトロピウム(アトロベント)
・オキシトロピウム(テルシガン)
などが挙げられます。
イプラトロピウム、オキシトロピウムは、吸入用抗コリン薬です。気管支平滑筋の M3 受容体を遮断することにより気管支収縮を抑制します。
ⅳ.ステロイド
このタイプの代表的な薬は
・ベクロメタゾンプロピオン酸エステル(アルデシン)
・フルチカゾンプロピオン酸エステル(フルタイド)
などが挙げられます。
ベクロメタゾンプロピオン酸エステル、フルチカゾンプロピオン酸エステルはステロイドです。T 細胞からのサイトカイン産生抑制作用により、炎症を抑える働きを示す薬です。主に予防的に用います。
吸入用ステロイドは、のどに残らないように、吸入後よくうがいをする必要があります。
ⅴ.ケミカルメディエーター遊離抑制薬
このタイプの代表的な薬は
・クロモグリク酸(インタール)
・トラニラスト(リザベン)
・イプジラスト(ケタス)
などが挙げられます。
クロモグリク酸、トラニラスト、イブジラストは、ケミカルメディエーター遊離抑制薬です。抗原抗体反応によるケミカルメディエーター(ヒスタミン、ロイコトリエンなど)の遊離を抑制することにより、抗アレルギー作用を示します。
イブジラストは、ロイコトリエン(LT)受容体遮断作用もあります。
ⅵ.LT(leukotriene)受容体遮断薬
このタイプの代表的な薬は
・プランルカスト(オノン)
・モンテルカスト(シングレア)
などが挙げられます。
プランルカスト、モンテルカストは、ロイコトリエン(LT)受容体遮断薬です。LT 受容体を遮断することにより抗アレルギー作用を示します。
ⅶ.TX(thromboxane)合成酵素阻害薬
このタイプの代表的な薬は
・オザグレル(ドメナン)
などが挙げられます。
オザグレルは、トロンボキサン(TX)A2 合成酵素阻害薬です。トロンボキサン合成を抑制することにより抗アレルギー作用を示します。
ⅷ.TXA2 受容体拮抗薬
このタイプの代表的な薬は
・セラトロダスト(ブロニカ)
などが挙げられます。
セラトロダストは TXA2 受容体遮断作用を示します。TXA2 受容体を遮断することにより抗アレルギー作用を示します。
ⅸ.Th2 サイトカイン阻害薬
このタイプの代表的な薬は
・スプラタスト(アイピーディー)
などが挙げられます。
スプラタストは、Th2 サイトカイン阻害薬です。Th2 リンパ球からのインターロイキン(IL)-4,5の産生を抑制することにより抗アレルギー作用を示します。
ⅹ.H1 拮抗薬
このタイプの代表的な薬は
・ケトチフェン(ザジテン)
・アゼラスチン(アゼプチン)
・エピナスチン(アレジオン)
・メキタジン(ゼスラン)
などが挙げられます。
ケトチフェン、アゼラスチン、エピナスチン、メキタジンは、ヒスタミン(H)1 受容体遮断作用により、抗アレルギー作用を示します。又、ケミカルメディエーター遊離抑制作用も持つ薬です。
代表的な気管支喘息治療薬をまとめると、以下の表になります。
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