代表的な中枢神経疾患は3つあります。
・ てんかん
・ パーキンソン病
・ アルツハイマー病
以下、それぞれについて順に解説していきます。
◇てんかん◇
てんかんとは、脳における過剰な放電により、発作が反復しておこる慢性脳疾患です。てんかんの発作は、意識消失の有無・程度により次の3つに分類されます。
・ 部分発作(意識消失なし)
・ 欠神発作(数秒間意識消失)
・ 強直間代発作(数分程度の意識消失)
また、抗てんかん薬はその作用機序により大きく4つに分類されます。
ⅰ.GABA 受容体タイプ
ⅱ.Na+ チャネル遮断タイプ
ⅲ.T型 Ca2+ チャネル遮断タイプ
ⅳ.GABA トランスアミナーゼ阻害タイプ
ⅰ.GABA 受容体タイプ
このタイプの代表的な抗てんかん薬には
・ フェノバルビタール(フェノバール)
・ プリミドン(マイソリン)
・ ジアゼパム(セルシン、ホリゾン)
・ クロナゼパム(リボトリール)
・ ニトラゼパム(ベンザリン)
などが挙げられます。( )の前に書いたのが薬の一般名、( )の中が商品名の一例になります。
フェノバルビタールの作用機序は、GABAA 受容体のバルビツール酸誘導体結合部位に結合し、GABA 神経系の活動性を高めることで抗てんかん作用を示します。プリミドンは、体内でフェノバルビタールなどに代謝され、様々な作用機序を介して効果を示します。
下の3つ(〇〇ゼパム)はBz(ベンゾジアゼピン)系の薬です。その作用機序は、GABAA 受容体の Bz 結合部位に結合しGABA 神経系の活動性を高めることで抗てんかん作用を示します。
ⅱ.Na+ チャネル遮断タイプ
このタイプの代表的な抗てんかん薬には
・ フェニトイン(ヒダントール)
・ カルバマゼピン(テグレトール)
・ ラモトリギン(ラミクタール)
などが挙げられます。これらは、Na+ チャネル遮断を通じて抗てんかん作用を示します。ラモトリギンについては、双極性障害にも用いられます。
ⅲ.T 型 Ca2+チャネル遮断タイプ
このタイプの代表的な抗てんかん薬には
・ エトスクシミド(ザロンチン)
・ トリメタジオン(ミノ・アレビアチン)
などが挙げられます。これらは、T 型 Ca2+ チャネルを遮断することで抗てんかん作用を示します。
ⅳ.GABA トランスアミナーゼ阻害タイプ
このタイプの代表的な抗てんかん薬には
・ バルプロ酸ナトリウム(デパケン)
が挙げられます。
これらは、GABA トランスアミナーゼを阻害することで抗てんかん作用を示します。
また、上記のⅰ~ⅳのほか
様々な作用機序で抗てんかん作用を示すものとして
・ ガバペンチン(ガバペン)
・ ゾニサミド(エクセグラン)
といった薬もあります。
抗てんかん薬についてまとめると、以下の表のようになります。
◇パーキンソン病◇
パーキンソン病は、ドパミン作動性神経の変性によりドパミン作動性神経とコリン作動性神経のバランスが崩れることで筋固縮、振戦といった症状がおきる進行性の疾患です。
パーキンソン病の治療薬は大きく2つに分類されます。
ⅰ.ドパミンを補充するタイプ
ⅱ.抗コリン作用を示すタイプ
ⅰ.ドパミンを補充するタイプ
このタイプの代表的な薬には
・ レボドパ(ドパストン)
・ カルビドパ(ネオドパストン*)
・ ベンセラジド(マドパー*)
・ エンタカポン(コムタン)
・ ブロモクリプチン(バーロデル)
・ ペルゴリド(ペルマックス)
・ タリペキソール(ドミン)
・ アマンタジン(シンメトレル)
・ セレギリン(エフピー)
(* を付けたものは、ドパミンとの合剤の商品名となります。)が挙げられます。これらは作用機序がそれぞれ少しずつ違っているので、順に説明します。
レボドパはドパミン前駆体です。中枢にドパミンを補充し、抗パーキンソン病作用を示します。
カルビドパとベンセラジドは、レボドパの代謝酵素である末梢性芳香族 L – アミノ酸脱炭酸酵素を阻害することで、中枢にレボドパをより多く届けることを可能にする薬です。この結果、間接的に抗パーキンソン病作用を示します。
エンタカポンは COMT(Cathecol-O-methyl transferase)阻害薬です。COMT を阻害し、末梢におけるレボドパの分解を阻害することにより、レボドパの脳内移行を高めます。症状の日内変動の改善が適応です。
ブロモクリプチンとペルゴリドは、麦角アルカロイドの誘導体です。麦角アルカロイドとは、小麦などに寄生する麦角菌による産生されるアルカロイドのことです。また、アルカロイドとは窒素含有有機化合物の総称です。これらは、D2 受容体を直接刺激することにより抗パーキンソン病作用を示します。
タリペキソールは非麦角アルカロイドですが、やはり D2 受容体を直接刺激し、抗パーキンソン病作用を示します。
アマンタジンは、神経末端においてドパミンの遊離を促進させることにより抗パーキンソン病作用を示します。この薬は、A 型インフルエンザ薬としても使用されます。
セレギリンは、MAOーB(monoamine oxidases B)阻害薬です。MAO はドパミンの分解酵素で、MAOを阻害することで、間接的にドパミンの量を増加させることで抗パーキンソン病作用を示します。
ⅱ.抗コリン作用を示すタイプ
このタイプの代表的な薬には
・ トリヘキシフェニジル(アーテン)
・ ビペリデン(アネキトン)
・ ドロキシドパ(ドプス)
が挙げられます。
トリヘキシフェニジルとビペリデンは、抗コリン作用により、ドパミン作動性神経とコリン作動性神経のバランスを整えることで抗パーキンソン病作用を示します。
ドロキシドパは、ノルアドレナリンの直接の前駆体です。パーキンソン病では、ドパミンの減少とともにノルアドレナリンという神経伝達物質も減少してきます。ノルアドレナリンを補充することで、立ちくらみや無動といったパーキンソン病の症状を改善します。
パーキンソン病の治療薬についてまとめると、以下の表のようになります。
◇アルツハイマー病◇
アルツハイマー病は、進行性の知的機能低下や人格障害を伴う認知症の一種です。抗アルツハイマー病治療薬は、大きく2つに分類されます。
ⅰ.アセチルコリンエステラーゼ阻害薬
ⅱ.NMDA受容体拮抗薬
ⅰ.アセチルコリンエステラーゼ阻害薬
アセチルコリンエステラーゼ阻害薬の代表的なものとして
・ ドネペジル(アリセプト)
・ ガランタミン(レミニール)
・ リバスチグミン(イクセロン)
が挙げられます。※リバスチグミンは、国内初の貼り薬です。
ⅱ.NMDA受容体拮抗薬
NMDA受容体拮抗薬の代表的なものとして
・ メマンチン(メマリー)
が挙げられます。
アルツハイマー病薬をまとめると以下のようになります。
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