問 題
48歳女性。身長160cm、体重65kg。営業職。1年ほど前から胸焼けやゲップなどがあり市販の胃腸薬で対応していた。最近、その症状が改善されず、また、突然、咳込んだりすることがあったため、消化器内科を受診したところ、逆流性食道炎と診断され、以下の処方が開始された。
問302
この患者の治療薬に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
- オメプラゾールの主たる代謝酵素はCYP2C9であるため、ワルファリンとの併用は注意すべきである。
- オメプラゾールの代謝に関して、日本人を含むモンゴル系人種で2%程度のPM(poor metabolizer)が存在する。
- オメプラゾールの代謝に関して、EM(extensive metabolizer)の患者では、PM患者より、症状の改善が期待できる。
- 患者に、噛んだり砕いたりせずに服用するように指導する。
- オメプラゾールの投与により、胃がんによる症状が隠ぺいされることがあるので、悪性でないことを確認して治療することが重要である。
問303
オメプラゾール錠を4週間服用した結果、胸焼けなどの症状は明らかに改善したが、以前からの咳は継続していた。そこで、文献検索により、逆流症状を有する患者の慢性の咳に対するプロトンポンプ阻害薬の効果に関する論文を入手した。その論文の中に以下の図が掲載されていた。
この図に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
- メタアナリシスの結果を示す際によく用いられ、ファンネルプロットと呼ばれる。
- 検討に用いられた3つの研究結果が不均一とはいえないことが確認できる。
- 横の線は、標準誤差を表す。
- 最下段のひし形は、3つの研究結果を統合したものである。
- 逆流症状を有する患者の慢性の咳に対して、プロトンポンプ阻害薬は、プラセボよりも有意に効果があると、読み取れる。
正解.
問302:4, 5
問303:2, 4
解 説
問302
選択肢 1 ですが
オメプラゾール(オメプラール)の主たる代謝酵素は CYP 2C19 です。CYP 2C9 では、ありません。(ワルファリンの主たる代謝酵素は、2C9 です。)よって、選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ですが
PM は、日本人を含むモンゴル系人種で約 20 % ほどいることが知られています。2 % 程度では、ありません。よって、選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 ですが
EM であれば、薬物がより代謝されるため効果は低くなると考えられます。つまり、症状の改善は、PM 患者より期待できなくなります。よって、選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4,5 は、その通りの記述です。
以上より、正解は 4,5 です。
問303
選択肢 1 ですが
このようなプロットは、木のように見えることから Forrest plot と呼ばれます。ファンネル(漏斗)プロット では、ありません。ちなみに、ファンネルプロットは、未公表試験を探し出すための手法です。横軸に、有効率の差、オッズ比など、縦軸に、標本の大きさ(の関数。) をとり、複数の臨床試験の結果をプロットします。
・標本が大きい(縦軸がより上の方)と統計的にブレが少ないはず(横軸に広がりがないはず)
・ブレは、左右対象となるはず → ろうと型(富士山型の方がわかりやすい ?)の分布になるはず という前提に基づき、結果の対称性に注目することで評価します。もしも不自然に、片方のみに結果が偏っている場合は「悪い結果だったから、出版しないでおこう」という出版バイアスがかかっていたのだと判断することができる手法です。
選択肢 2 ですが、正しい選択肢です。
研究結果の均一性とは、横軸の中心から見て左右に散らばっているかどうかということです。本問における3つの研究は全て、左側によっており均一性が高いと考えられます。
選択肢 3 ですが
横の線が表すのは、標準偏差です。標準誤差では、ありません。よって、選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 ですが、正しい選択肢です。
ひし形は、3つの研究結果を統合した結果であり、ひし形の上下の頂点を結んだ位置が統合されたオッズ比です。左右の頂点を結んだ範囲が3つの研究結果を統合した信頼区間です。
選択肢 5 ですが
有意かどうかはオッズ比1に、横棒がかかっているかどうかで判断します。3つの研究全てにおいてオッズ比1に、横棒がかかっているため有意に効果があるとは、いえません。(統計的偶然の範囲内の結果である、と読み取れるということです。)よって、選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 2,4 です。
コメント