問 題
初発の急性リンパ性白血病である21歳男性患者に対して、抗がん剤による寛解導入療法を実施することとなった。治療後に発症する可能性のある腫瘍崩壊症候群について、薬剤師がこの患者に説明することとなった。薬剤師は、重篤副作用疾患別対応マニュアルを利用することにした。
問294
重篤副作用疾患別対応マニュアル及びそれを利用した服薬指導に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
- 当該マニュアルは、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)のホームページから入手した。
- 当該マニュアルは、患者向け、医師向け、薬剤師向けの3部構成である。
- この副作用を予防するために、十分に水分補給するように指導した。
- 体液を酸性側に傾けるための薬を服用することを説明した。
- 好発時期は、治療開始後1~2週目であることを説明した。
問295
腫瘍崩壊症候群に関する記述のうち、誤っているのはどれか。1つ選べ。
- 血清リン値が著しく増加する。
- 血清カリウム値が著しく低下する。
- 腎機能低下を引き起こす。
- 予防には、抗がん剤の投与開始前にラスブリカーゼを点滴投与するのが有効である。
- 腎機能が正常な場合には、アロプリノールの経口投与が有効である。
正解.
問294:1, 3
問295:2
解 説
問294
選択肢 1 は、正しい選択肢です。
選択肢 2 ですが
マニュアルは、一般向けと、医療関係者向けの2部構成です。3部構成では、ありません。よって、選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 は、その通りの記述です。
参考)腫瘍崩壊症候群のマニュアル (医療関係者向け)
選択肢 4 ですが
腫瘍崩壊症候群とは、腫瘍の急速な崩壊に伴う血液における電解質バランスの崩れや血液が酸性に傾くといった種々の変化です。血液が酸性に傾くのを防ぐためにアルカリ性にするような薬(クエン酸塩、重層など)が用いられます。酸性側に傾ける薬では、ありません。よって、選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 ですが
腫瘍崩壊症候群は、治療開始後 12 時間 ~ 72 時間以内が好発時期です。治療開始後 1~2 週目では、ありません。よって、選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 1,3 です。
問295
腫瘍崩壊症候群ではカリウム値は、増加します。
以上より、正解は 2 です。
ちなみにこの問題では、腫瘍崩壊 → 細胞内の物質が血中へと放出される。 → 陽イオンの分布を考えると、細胞の外は Na+ イオンで、内は K+ イオンが多い → 高カリウム血症になるはずと推測することで正解に辿り着けるのではないかと考えられます。
それから選択肢 4 のラスブリカーゼは、高尿酸血症治療薬の一つです。進化の過程で、ヒトでは失われた尿酸オキシダーゼ(尿酸→アラントインへ分解)です。がん化学療法に伴う高尿酸血症の治療に用いられることがあります。タンパク質なので、経口では分解されるため静脈注射で用いられます。
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