問 題
68歳男性。10年前より、糖尿病の治療を継続中である。定期検診時に随時尿の尿中アルブミン/クレアチニン比が350mg/gであった。本日の診察時の血圧は150/95mmHgであり、高血圧治療のためロサルタンカリウム錠25mgが追加となった。
問260
この患者にロサルタンカリウム錠が追加された理由及びその使用上の留意点について誤っているのはどれか。2つ選べ。
- 腎動脈狭窄のある患者へも安全に使用することができる。
- タンパク尿を伴う2型糖尿病の糖尿病性腎症に適応がある。
- 血清カリウム値を確認する必要がある。
- 血清クレアチニン値の経過を確認する必要がある。
- 血糖値が上昇する可能性がある。
問261
ロサルタンに関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
- 主代謝物(カルボン酸体)も、アンギオテンシンⅡAT1受容体を遮断する。
- アルドステロンの産生を促進する。
- 腎の輸出細動脈を拡張させて糸球体内圧を低下させる。
- グルカゴンの分泌を促進する。
- ブラジキニン分解酵素(キニナーゼ)を阻害する。
正解.
問260:1, 5
問261:1, 3
解 説
問260
選択肢 1 は、正解です。使用上の留意点について、誤っています。
ロサルタン(ニューロタン)は、ARB (アンギオテンシンⅡ受容体拮抗薬)です。ARB や ACE 阻害薬は腎保護機能があるといわれます。腎保護を担う、1つの大きな機能は糸球体内圧の減少です。ARB や ACE 阻害薬を投与すると糸球体における輸入、輸出の両動脈を拡張させます。この際、輸出側の動脈に薬が強く作用します。その結果、糸球体の中の血がより輸出されることで内圧が下がります。(下図イメージ参照)
ところが、腎動脈狭窄(つまり、糸球体動脈も狭窄)時はそもそも腎臓への血液流入が減少しています。そのため、ARB の使用によりさらに血流が減少し、腎機能がむしろ悪化することがあります。このため、両方の腎臓が狭窄している場合は ARB は使用禁止です。片方の腎臓のみの狭窄については、腎機能に注意しつつ使用されることもあります。どちらにせよ、安全に使用できるという記述は誤りです。
選択肢 2 ~ 4 は、正しい選択肢です。
使用上の留意点について正しいです。(つまり、本問の正解では、ありません。)
選択肢 5 は、正解です。使用上の留意点について、誤っています。
ARB の副作用として、まれにおける低血糖が知られています。つまり留意すべきは、血糖値の低下です。血糖値の上昇の可能性では、ありません。
以上より、正解は 1,5 です。
問261
選択肢 1 は、正しい選択肢 です。
選択肢 2 ですが
ロサルタンは ARB です。アンギオテンシン受容体(AT1 受容体)を遮断することでアルドステロン産生を抑制します。よって、選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 は、正しい選択肢です。
(前問解説 参照)
選択肢 4 ですが
グルカゴンの分泌を促進させるという作用は知られていません。よって、選択肢 4 は誤りであると考えられます。
選択肢 5 ですが
キニナーゼⅡというのは、ACE のことです。つまり、ACE 阻害薬に関する記述です。ARB であるロサルタンはキニナーゼⅡを、阻害しません。よって、選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 1,3 です。
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