薬剤師国家試験 第99回 問250-251 過去問解説

 問 題     

37歳男性。食欲不振、消化不良の症状があった。自らの判断で、六君子湯(ニンジン、ハンゲ、ブクリョウ、ソウジュツ、タイソウ、チンピ、カンゾウ、ショウキョウ)を購入し、服用していた。

しかし、下血を伴う下痢と腹痛を繰り返すようになり、近医を受診したところ、潰瘍性大腸炎と診断され、以下の薬剤が処方された。

問250

処方された薬剤及び六君子湯に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. 六君子湯は、グレリンの分泌を介して食欲不振などの胃腸症状を改善する。
  2. サラゾスルファピリジンは、腸内細菌により、5-アミノサリチル酸とスルファピリジンに分解される。
  3. サラゾスルファピリジンは、潰瘍性大腸炎以外に消化性潰瘍の治療に用いられる。
  4. プレドニゾロンは、コルチゾールに比べ、鉱質コルチコイド作用が強く、糖質コルチコイド作用が弱い。
  5. 治療を長期間継続する場合には、サラゾスルファピリジンを徐々に減量してプレドニゾロンによる維持療法とする。

問251

六君子湯の重大な副作用はどれか。2つ選べ。

  1. 間質性肺炎
  2. 偽アルドステロン症
  3. 血圧低下
  4. ミオパシー

 

 

 

 

 

正解.
問250:1, 2
問251:2, 4

 解 説     

問250

選択肢 1,2 は、正しい選択肢です。
グレリンとは、主に胃から分泌される28アミノ酸残基よりなる食欲を亢進させるペプチドです。ホルモンの一種です。成長ホルモン分泌促進作用を持ちます。

選択肢 3 ですが
サラゾスルファピリジンは、選択肢 2 の記述のように腸内細菌により分解されて、有効成分が作用します。よって、消化性潰瘍、すなわち主に胃酸が要因となって生じる潰瘍には用いられません。なぜなら、まだ胃においてはサラゾスルファピリジンは腸内細菌による分解を受けていないからです。又、サラゾスルファピリジンの代表的な副作用が消化性潰瘍です。以上より、選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
プレドニゾロンは、コルチゾールに比べ糖質コルチコイドが強いです。又、鉱質コルチコイド作用は、弱いです。よって、選択肢 4 は誤りです。

ちなみに、糖質コルチコイドの作用は血糖値上昇、抗炎症作用などです。鉱質コルチコイド作用の作用は、腎臓での Na+ 再吸収促進です。結果として、高血圧になります。

Na+ 再吸収促進→→→高血圧 を詳しく見ると、以下のようになります。
Na+ 再吸収促進に伴い血中の Na+ 濃度が上昇 → 上昇した分を薄めようと、浸透圧により水分が移動 → 血液中に水分が移動することで血圧が上昇という流れです。

抗炎症作用など、有益な作用がある一方で、大量に使うと高血圧などの副作用につながるというステロイドホルモンの特徴がありました。そこで、化学的な修飾をほどこし、糖質コルチコイド活性を高めつつ鉱質コルチコイド活性をできるだけ少なくしたのがプレドニゾロンやメチルプレドニゾロンといったステロイド剤です。

選択肢 5 ですが
治療が長期間に渡る場合は、ステロイドの長期投与による副作用を避けるために、症状の改善に伴いステロイド剤は漸減中止が望ましいとされています。(2014.3 月時点、潰瘍性大腸炎治療指針より)サラゾスルファピリジンを漸減し、プレドニゾロンによる維持療法を行うというのは明らかに誤りであると考えられます。よって、選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 1,2 です。

問251

六君子湯の重大な副作用は、偽アルドステロン症とミオパシーです。カンゾウに含まれるグリチルリチンにより、偽アルドステロン症と呼ばれる重大な副作用がおきる場合があります。

偽アルドステロン症とは、アルドステロン(鉱質コルチコイドの一種)類似の作用をグリチルリチンが示すことにより高血圧や、低カリウム血症が引き起こされる症状です。低カリウム血症は
Na+ 再吸収が増加 → Na+ /K+ 交換系を介して K+ の尿中排出が亢進 → 低カリウム血症 という流れで引き起こされます。

この低カリウム血症によって引き起こされることがあるのがミオパシーです。ミオパシーとは、筋肉が萎縮し、力が入らない症状のことです。ちなみに、低カリウムでなぜ筋肉に力が入らなくなるかというと、そもそもカリウムには、ナトリウムと協働して筋肉の収縮と弛緩を調節するという働きがあるからです。カリウムが不足することで収縮と弛緩をうまく調節できなくなると考えられます。

以上より、正解は 2,4 です。

ちなみに、選択肢 1 の
間質性肺炎が代表的な副作用である漢方は小柴胡湯です。

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