問 題
63歳男性。脂質異常症と診断され、食事療法及び運動療法とともにフルバスタチンナトリウム錠20mgによる治療を受けていたが、改善がみられなかった。そこで、以下の処方に変更された。
問206
この患者への薬剤師による服薬指導の内容として誤っているのはどれか。1つ選べ。
- 脂質異常症は自覚症状がないが、服薬は重要であることを説明した。
- 食事療法及び運動療法は継続するように指導した。
- コレスチミド錠を飲み忘れた場合、就寝前にフルバスタチンナトリウム錠と一緒に服用するように指導した。
- 筋肉痛や脱力感がある場合は受診するように指導した。
- 便秘が起こることがあると説明した。
問207
フルバスタチンナトリウムのほかにも、以下の例のように分子内にフッ素原子が導入された医薬品が数多く開発されている。医薬品の設計において水素原子をフッ素原子に置き換えることにより期待される主な効果はどれか。2つ選べ。
- 炭素-フッ素結合は切断されにくいので、生体内での安定性が高まる。
- 親水性の向上により、吸収が促進される。
- フッ素は電気陰性度が大きいので、分子のイオン化が促進される。
- 分子全体の大きさにはほとんど影響を与えずに生物活性が増強される。
正解.
問206:3
問207:1, 4
解 説
問206
コレスチラミンは陰イオン交換樹脂です。分子中に陽イオンがあります。そのため、陰イオン性薬物を吸着し消化管吸収を阻害します。その結果、血中濃度が低下します。
コレスチラミンとフルバスタチンの併用においても、血中濃度が低下することが知られています。そのため、コレスチラミン服用後 3 時間以上あけてからフルバスタチンを服用するように指導します。誤っている選択肢は 3 です。
選択肢 1,2,4,5 は、正しい記述です。
以上より、正解は 3 です。
問207
選択肢 1 は、その通りの記述です。
C-F 結合は、結合エネルギーが 489 kJ/mol と C-C 結合や C-H 結合と比べて高く、切断されにくいため安定性が高まります。
選択肢 2 ですが
F の導入により、一般的には疎水性が向上します。よって、選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 ですが
フッ素の電気陰性度は、原子中最大です。つまり、選択肢前半部分は、正解です。しかし、イオン化が促進されるわけでは、ありません。選択肢後半部分は、誤りです。よって、選択肢 3 は誤りです。
補足
「電気陰性度が最大なら、イオン化促進じゃないの・・・?」という疑問がわくかもしれません。
イオン化には「フッ素が何と結合するか」が大きなポイントとなります。イオン化するということは、フッ素が電子をすごく引っ張って、F-となり、引っ張られた方が ◯+ (◯には何が入ってもOK)となる、ということです。すると、◯の側が、本問の分子のように大きい場合は
F と結合している直近の原子は、電子が乏しくなるでしょうが、分子の他の部分から電子が供給されることで、それほど分極しない、と考えられます。
さらに、分子表面の F は、かなり負に分極することにより、周囲が水、すなわち、溶媒としてはかなり分極しているもの ならば、水(の中の、負に分極している O )と、電気的にはじきあうと考えられます。すなわち、F の導入により、疎水性が増す ということになります。 補足 以上
選択肢 4 は、その通りの記述です。
フッ素の特徴として、水素に次いで原子半径が小さいという特徴があります。そのため、水素をフッ素に置換してもほとんど分子全体の大きさには影響を与えません。
以上より、正解は 1,4 です。
コメント