問 題
35歳女性。関節リウマチで通院中の患者に以下の処方せんが発行された。
問202
患者への情報提供に関する記述のうち、誤っているのはどれか。1つ選べ。
- メトトレキサートカプセルを服用し忘れたときは、葉酸と一緒に服用する。
- 妊娠の疑いがある場合には、すべての薬剤の服用を速やかに中止して、医療機関に連絡する。
- 高熱や咳が続く場合には、直ちに医療機関に連絡する。
- サラゾスルファピリジン腸溶錠を服用し忘れても、次回に2回分まとめて服用してはならない。
- 尿が黄赤色になることがある。
問203
メトトレキサートの治療薬物モニタリングには、イムノアッセイが利用されている。イムノアッセイに関する記述のうち、誤っているのはどれか。1つ選べ。
- メトトレキサートのような低分子は抗原性を示さないので、抗体作製には、高分子と結合させる必要がある。
- 競合法では、測定対象物質の存在量に依存してシグナル強度が減少する用量依存曲線が得られる。
- 蛍光偏光イムノアッセイでは、蛍光標識した抗原が抗体に結合すると抗原の回転運動が減少するため、蛍光偏光度は減少する。
- Enzyme multiplied immunoassay technique(EMIT)は、均一系イムノアッセイの1種である。
- 凝集比濁法では、免疫複合体の形成により粒子が凝集する性質を応用している。
正解.
問202:1
問203:3
解 説
問202
選択肢 1 ですが
葉酸(フォリアミン など)は、メトトレキサート(MTX)の副作用(肝機能障害 等)の予防や治療のために用いられます。
MTX と 葉酸 の2剤は同時に服用すると、MTX の作用が弱まります。そのため、24~48時間服用間隔を空けて葉酸を服用します。(連日にするのは、1日間があくよりも忘れにくいから というのが大きな理由と考えられます。)
MTX 服用忘れの時は、MTX 服用 → 翌日に葉酸を服用とするとよいです。一緒に服用は、避けるべきです。よって、選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ~ 5 は、正しい記述です。
以上より、正解は 1 です。
問203
選択肢 1 は、正しい記述です。
抗原性とは、抗体に結合することができる性質です。小さすぎる低分子は、認識できる抗体が存在せず抗原性が、ありません。そこで、低分子に高分子を結合させることで抗体作製を行います。
選択肢 2 は、その通りの記述です。
競合法とは、例えるなら、椅子の数が決まっている椅子取りゲームです。椅子(抗体のたとえ です。)を10個と、椅子に座れるゼッケン付きの人が10人 始めにいるとします。(人は、抗原のたとえ。ゼッケンは、放射標識のたとえ です。)
この状態で椅子取りゲームをすると、ゼッケン付きの人10人が、10個の椅子に座ります。ここで、何人かよくわからないけど椅子取りゲームに混ざってきたとします。仮に、10人 混ざってきたとしましょう。※ 新しくゲームに参加する人には、ゼッケンがありません。すると、実力に差がないなら、今度はゲーム後に椅子に座っている人を見ると「ゼッケン付きが5人」になるはずです。
そして、新しく混ざってきた人の数が10人と知らなかったとしてもこの、ゲームの結果だけ見れば「もともとゼッケン付きの10人が、みんな椅子に座れるゲームが5人しか座れていない。→新しく10人が混ざってきたのだろう」と、計算、推測できます。
このように、まず準備として始めに「一定量の放射標識した物質」及び「一定量の抗体」を準備します。そして、測定対象の物質と、放射標識した物質を抗体に対して競合させます。最後に、抗体と結合した抗原のみを取り出しシグナル強度を測定することで、測定対象の物質の量を測るという方法が競合法と呼ばれます。
選択肢 2 は正しい記述です。
「測定対象の物質量」は「新しく入ってきた人」に対応します。「シグナル強度」は「ゲームが終わった時に座っているゼッケン付きの人の数」に対応します。確かに、測定対象の物質量が増えれば増えるほどシグナル強度は減少するような用量依存曲線を得ることができます。
選択肢 3 ですが
抗原と抗体が結合すると、固定されて抗原の回転が減少します。その結果、振動方向が同じ向きとなり偏光を発します。つまり、偏光度は増加します。減少では、ありません。よって、選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 は、正しい記述です。
均一系と、不均一系の違いは、抗体に結合した抗原(B)と非結合の抗原(F)の分離を行うかどうかです。B/F 分離を行わないのが均一系免疫測定系です。B/F 分離を行うのが不均一系免疫測定系です。
選択肢 5 は、その通りの記述です。
以上より、正解は 3 です。
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