問 題
84歳男性。急性膵炎で緊急入院し、注射用ナファモスタットメシル酸塩10mgを投与することになった。
問198
この注射剤に関する記述のうち、誤っているのはどれか。1つ選べ。
- 溶解には、生理食塩液を用いる。
- 約2時間かけて、静脈内に点滴注入する。
- 血管外漏出により、注射部位に炎症を起こすことがある。
- 本剤の投与により、高カリウム血症が現れることがある。
- アミノ酸輸液製剤との混合を避ける。
問199
ナファモスタットメシル酸塩製剤に亜硫酸塩を含む注射剤を混合した場合、及び混合しない場合の残存率の経時変化を求めた(図1)。また、pHと分解速度定数との関係も求めた(図2)。これらのデータから考えられることはどれか。2つ選べ。ただし、これらの実験は37℃で行った。
- 残存率の対数と時間との間に直線関係が認められることから、2次反応とみなすことができる。
- 残存率R(%)と分解速度定数kの関係はで表すことができる。ただしtは時間を表す。
- 亜硫酸塩なし、pH5~7の範囲において、加水分解反応は酸触媒作用により促進される。
- 亜硫酸イオンは、触媒作用により分解速度を増大させる。
- 図のデータから加水分解反応の活性化エネルギーを求めることができる。
正解.
問198:1
問199:2, 4
解 説
問198
ナファモスタットメシル酸塩(フサン)は、生理食塩水液 で直接溶解させると結晶が析出するため、注射用水や、5 % ブドウ糖注射液を用いて溶解します。よって、選択肢 1 が誤りです。
他の選択肢は、全て正しいです。
以上より、正解は 1 です。
ちなみに、選択肢 4 について
フサンの注意事項として、特に注意が必要です。膵炎患者に、フサンを使用して、高 K 血症が見られた時は、メシル酸ガベキサート(FOY)を使用するといった代替案が考えられます。
問199
選択肢 1 ですが
log をとって、直線関係となるのは1次反応の特徴です。よって、選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 は、その通りの記述です。
選択肢 3 ですが
pH 5~7において、pH が上がるほどに分解速度が大きくなっていることから酸触媒作用ではないと考えられます。(酸触媒作用であれば、pH が上がる、すなわち塩基性になるほど、触媒作用が低下するはずだからです。)よって、選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 は、その通りの記述です。
亜硝酸を入れると反応速度が増加していることに加え、pH が上がると反応速度がより上昇していることからイオンの形で作用していると考えられます。
選択肢 5 ですが
活性化エネルギーを求めることができる式は、ln k = -E/RT + ln A です。つまり、横軸に1/T 、 縦軸に ln k をとったグラフからであれば、活性化エネルギーを求めることができます。しかし、本問の図では、T が 37℃と一定なのでこの図のデータだけから活性化エネルギーを求めることはできません。よって、選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 2,4 です。
補足
ちなみに本問は、選択肢 2 を実際に導いていると時間が足りないのではないかと思います。そのため、試験本番では選択肢1,3,5 を誤りと判断できればよいと思われます。
一応、参考ですが、選択肢2の式は
ln C = -kt + ln C0 で、一定時間たった時の C は、R を用いて、C=(R/100) C0 と表すことができるため、これを代入して、k について解くと導出できると思います。余裕があれば、ぜひお試し下さい。補足 終わり
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