薬剤師国家試験 第99回 問181 過去問解説

 問 題     

22歳男性。小児期より、インスリンの皮下注射を毎朝施行していたが、就職し、生活が不規則になっていた。その男性がある朝、倒れているのが発見された。

意識不鮮明。呼びかけに答えない。血圧90/60mmHg、呼吸数20/分、脈拍100/分整。尿カテーテルを挿入し尿検査したところ、尿糖(+++)、タンパク(+)、ケトン体(+++)だった。

動脈血液ガス分析を施行した時のpHの値に最も近いと考えられるのはどれか。1つ選べ。

  1. 8.0
  2. 7.6
  3. 7.4
  4. 7.2
  5. 6.0

 

 

 

 

 

正解.4

 解 説     

既往が糖尿病であり、ケトン体が(+++)であることから糖尿病性ケトアシドーシスであると考えられます。ケトアシドーシスであれば、体内の血液は酸性に傾いた状態です。

通常の血液 pH は 7.35 ~ 7.45 に保たれています。(この範囲は、知っている前提です。)そして、血液は緩衝能があり、酸性に傾いたといっても pH が 1 以上変動するということは考えにくいと推測されます。

よって、 7.35 よりも酸性、すなわち数値が低く、それほど 7.35 よりも離れていない数値は、選択肢 4 の 7.2 です。

以上より、正解は 4 です。

ちなみに、糖尿病によるケトアシドーシスの発生は以下のような流れでおこります。

インスリンが欠乏しているためブドウ糖の利用ができない → エネルギー源として、脂肪酸で代用する → 過剰に脂肪酸を代謝すると、代謝産物であるアセチル CoA の一部が別経路で代謝されてケトン体(アセト酢酸など)がたくさん作られる → 血液が酸性に傾く です。

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