問 題
乳酸脱水素酵素(lactate dehydrogenase:LDH)は、下記の反応を触媒する酵素である。
図1は、ヒト心臓の細胞質にあるLDHのアイソザイムを用いて、さまざまなpHの溶液中で、ピルビン酸(P)からL-乳酸(L)が生成する反応(P → L)、あるいはL-乳酸からピルビン酸が生成する反応(L → P)について調べたときの酵素活性の相対値を示している。
また、図2は、NAD+とNADHの吸収スペクトルを示している。
L-乳酸を基質として血清中の本酵素の活性を測定するとき、方法と考察に関する記述のうち適切でないのはどれか。1つ選べ。
- 反応液は、血清(被検試料)、L-乳酸、NAD+及び緩衝液から成る。
- 試料である血清を加えない反応液を調製し、これについても同様に測定する。
- 活性測定に用いる緩衝液のpHは、8.5に調整する。
- 一定時間反応させた後、反応液の340nmの吸光度の減少を測定する。
- 血清中の本酵素の活性は、心臓傷害の指標になると考えられる。
解 説
選択肢 1 は正しい記述です。
反応式の左辺にある L-乳酸、NAD+ 、及び 血清中の酵素の活性を測定する、とあるから血清 を加え pH 変化を抑えるために緩衝液を用いていると考えられます。
選択肢 2 は正しい記述です。
緩衝液の影響を確認するために試料を加えない反応液を調製し、測定する必要があります。
選択肢 3 は正しい記述です。
図 1 を読み取ることで、L → P における pH は、大体 8.5 が 活性が高いことが読み取れるからです。
選択肢 4 ですが
一定時間反応させると、化学式から判断して NAD+ が消費され、NADH が増えると考えられます。そして、図2より、NADH の吸光度は、340 nm 付近に現れるため 340 nm の吸光度の上昇を測定すると考えられます。減少では、ありません。よって、選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 は正しい記述です。
本酵素は、心臓の細胞質にある、との記述があるため、いわゆる逸脱酵素、すなわちその部分の細胞が壊れた時に周囲に溢れ出る酵素として測定できれば、心臓障害の指標になりうると考えられます。
以上より、正解は 4 です。
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