問 題
液体クロマトグラフィーに関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
- 質量分布比(k’)が小さいほど、試料はカラムに保持されやすい。
- 同一の分離条件で2つの化合物の保持時間が同じ場合、分離係数(α)は0である。
- 理論段数(N)が大きい値を示すほど、優れた分離系である。
- テーリングしたピークのシンメトリー係数(S)は、1.0より小さい。
- ピークの完全分離とは、分離度(Rs)1.5以上を意味する。
解 説
選択肢 1 ですが
質量分布比 とは、別名 保持係数 です。サンプル成分が移動相にいる時間と、固定相にいる時間の相対比です。つまり「どれだけ固定相によって、サンプルの移動が遅くなるか」を表すパラメータです。質量分布比が大きいほど試料はカラムに保持されやすいといえます。よって、選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ですが
分離係数とは、別名 選択性です。2つのサンプルがある場合の保持係数の比のことです。分析対象が複数ある場合において、相対的な固定相への親和性の違いの大きさを表すパラメータです。
同一の分離条件、つまり同一の固定相で2つの化合物の保持時間、つまり移動相にいる時間が同じなら、保持係数がどちらも同じになり、比をとれば1になるはずです。よって、選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 は正しい記述です。
理論段数とは、カラム性能の指標です。大きい値の方が、優れた分離系です。
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以下は、理論段数についての補足解説です。
理論段数(N)は、2通りの表現で表されます。
この指標が大きい値を示すということは、同じ Tr に対して「W が小さい = 鋭いピークである」ということを表します。言い換えると、保持時間に対してピークがシャープに出るということです。「あまり時間をかけず、ピークがシャープに出るカラム」はよいカラムであるといえます。よって、理論段数が大きいと、よい分離系であるといえます。
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選択肢 4 ですが
テーリングとは、クロマトグラフィ-を行った結果、だらだらとピークが出続けることです。原因としては、注入口、検出器へのカラム取り付けの不具合や、溶媒とサンプルが不均一に混合しているといった理由が考えられます。シンメトリー係数は、以下の式で表されます。
シンメトリー係数が0~1の時は、ピークの頂点よりも左側の方が幅広いリーディングと呼ばれる状態を示します。1を超えるとピークの頂点よりも右側が幅広いテーリングと呼ばれる状態を示します。テーリングの時は、シンメトリー係数は1より大きな値を示します。よって、選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 は正しい記述です。
ピークの完全分離とは、分離度1.5以上のことです。分離度とは、2つのピークがどれだけ離れているかを示す指標です。分離度1.5だと、2つのピークの重なりが 0.15% です。
以上より、正解は 3,5 です。
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