問 題
55歳男性。体重52kg。保険薬局に以下の処方せんを持参した。
問290
この症例の病態と薬物治療に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
- 抗コリン薬は認知症症状をきたしやすく、高齢者では使用を控える。
- Wearing-offの症状に対する処方である。
- Hoehn and Yahrの重症度分類が用いられる。
- 神経変性疾患として、アルツハイマー病より有病率が高い。
- On-offとはレボドパ製剤の1回服用後の効果持続時間が短縮していく症状である。
問291
この患者に対する服薬指導時の対応として、適切なのはどれか。2つ選べ。
- 前回の来局から本日までの日数と前回の投与日数を確認した。
- 手のふるえが見られたが、患者に確認することなくPTPシートのまま投薬した。
- 尿が出にくくないか確認した。
- 自動車の運転は差支えないと説明した。
正解.
問290:1, 3
問291:1, 3
解 説
問290
アセチルコリンの低下は、認知症と有意な関係があります。(認知症薬として有名な、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬である塩酸ドネペジルを考えるとイメージを持ちやすいかもしれません。)よって、抗コリン薬は、認知症のある患者および高齢者では、使用を控える方がよいとなっています。
wearing-off とは、パーキンソン病薬による治療を続けていく中で、治療初期には一日中症状が著しく改善していたものが、ある程度の時間がたつと症状が以前のように戻ったり以前よりもふるえなどがひどくなったりするようになってくることを示す言葉です。wearing-off を比較的起こしにくい処方としては、ドパミンアゴニストが知られています。本処方には、ドパミンアゴニストは含まれていないので、選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 はその通りの記述です。
Hoehn and Yahr の重症度分類は、0度から5度までの分類で、数字が増えるほど重症です。
パーキンソン病の有病率は、日本では人口10 万人あたり100 ~ 150 人と推定されています。難病指定の一つです。一方、アルツハイマー病は、現在約200万人(10万人あたり、大体 2000 人)と推定されています。よって、アルツハイマー病の方が、有病率は高く、選択肢 4 は誤りです。
On – off とは、レボドパ製剤によりパーキンソン症状がコントロールされている状態及び、効果がなくなった状態を示す表現です。On - off の頻度が多くなっていくこと、すなわち、レボドパ製剤の1回復用後の効果持続時間が短縮していく症状のことを wearing – off 減少と呼びます。
以上より、正解は 1,3 です。
問291
パーキンソン病の治療においては、症状の変化に伴う服薬の用法・用量や投与日数の変更が頻繁におきます。そのため、投与日数の確認は、適切であると考えられます。
PTP シートから薬を取り出すのに苦労していたり、それが原因によるコンプライアンスの悪化がないかといった点を確認するのが適切であると考えられます。よって、選択肢 2 は誤りです。ちなみに、そのような困難が確認できた時は、一包化などの対応が適切であると考えられます。※一包化をしても、その袋から取り出すのに苦労するといったケースもあるので、服薬に困難を感じていないかの確認は、一包化にしたとしても継続する必要があります。
トリヘキシフェニジルが抗コリン薬であるため、代表的な副作用である排尿障害の確認をすることは適切であると考えられます。
トリヘキシフェニジルが抗コリン薬であるため、眠気などの副作用が起きる可能性があります。自動車の運転等、危険を伴う機械の操作には従事させないよう注意する必要があります。よって、選択肢 4 は誤りです。
以上より、正解は 1,3 です。
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