問 題
10歳男児。体重30kg。てんかんのためフェノバルビタールを服用していた。最近、傾眠傾向にあり、母親が心配になり、男児と医療機関を受診した。
薬剤師がフェノバルビタールの血清中濃度を測定したところ40μg/mLであり、治療有効濃度を超えていた。男児の肝機能及び腎機能は正常であった。
問270
この患者への処置として、最も適切なのはどれか。1つ選べ。
- アトロピン硫酸塩水和物の静注
- フルマゼニルの静注
- 炭酸水素ナトリウムの点滴静注
- 塩化アンモニウムの点滴静注
- ホリナートカルシウムの静注
問271
前問で選択した薬物がフェノバルビタールの体内動態に及ぼす影響として、正しいのはどれか。1つ選べ。
- 消化管吸収の阻害
- 尿細管再吸収の抑制
- 尿細管分泌の促進
- 受容体での拮抗
- 胆汁中排泄の促進
正解.
問270:3
問271:2
解 説
問270
アトロピンは、有機リン中毒に対する対症療法として用いられる解毒剤です。
フルマゼニルは、ベンゾジアゼピン系薬物による過鎮静に対する解毒剤です。
炭酸水素ナトリウム(メイロン)を静注することにより、尿の pH がアルカリ側に変化します。フェノバルビタールは酸性薬物なので、尿に溶けやすくなることで尿中への排出量が増加することが知られています。
塩化アンモニウムは、高度な低 Cl 性アルカローシスの是正における電解質補液の電解質補正に用いられます。
ホリナートカルシウムは、メトトレキサートの副作用を予防する薬です。又、テガフール・ウラシルの作用増強にも用いられます。葉酸の活性型製剤です。
最も適切なのは、炭酸水素ナトリウムの点滴静注です。
以上より、正解は 3 です。
問271
炭酸水素ナトリウム静注により、尿の pH がアルカリ性に偏ることで、酸性薬物であるフェノバルビタールの尿中排泄が促進されます。これは、再吸収の抑制という形で実現されます。
再吸収される際には、薬物が分子形であることが求められますが、尿の pH がアルカリ性になることで、酸性薬物であるフェノバルビタールはよりイオン形の割合が高くなると考えられます。このため、再吸収が抑制され、結果として排泄が促進されます。
以上より、正解は 2 です。
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