問 題
80歳女性。体重65kg。うっ血性心不全、高血圧症、慢性腎不全と診断され、以下の薬剤を服用していた。アレルギー歴、肝機能障害、副作用歴なし。
昨日、食欲低下と不整脈等の体調変化が認められ、救命救急センターに運ばれた。
- ジゴキシン錠0.25mg
- フロセミド錠40mg
- スピロノラクトン錠25mg
- デノパミン錠5mg
- バルサルタン錠40mg
問268
診察した医師はジギタリス中毒を疑い、薬剤師に情報提供を求めた。ジギタリス中毒に関する内容として、誤っているのはどれか。1つ選べ。
- 消化器症状として食欲不振、悪心がある。
- 視覚異常として黄視・複視がある。
- 血清中ジゴキシン濃度(トラフ値)が2ng/mLを超えると、中毒症状の発現頻度が高くなる。
- 肝機能障害のある患者では中毒症状を起こしやすい。
- 一般に、ジゴキシン除去を目的とした血液透析は無効である。
問269
この患者で推定される薬物の体内分布に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
- 高齢であるため体脂肪率が増加しており、脂溶性の高い薬物の脂肪組織への蓄積が生じやすい。
- 高齢であるため血漿中のα1-酸性糖タンパク質濃度が低下しており、塩基性薬物の非結合形分率が上昇している。
- 心不全により血流が増大しており、薬物の分布容積の増大が起こりやすい。
- 慢性腎不全により血漿中のアルブミン濃度が低下しており、酸性薬物の非結合形分率が上昇している。
正解.
問268:4
問269:1, 4
解 説
問268
ジギタリス中毒とは、消化器症状や、視覚異常、不整脈などが生じる、主にジギタリス製剤によって引き起こされる副作用です。
選択肢 1 ~ 3 はその通りの記述です。
ジゴキシンは主に腎臓により排泄されるため、選択肢 4 は誤りです。
ジゴキシンは、分布容積が大きい薬物であるため、血液中のジゴキシンは、体内の総ジゴキシンの極めてわずかな量であることになります。よって、透析によるジゴキシン除去は、一般に無効です。選択肢 5 はその通りの記述です。
問269
選択肢 1 はその通りの記述です。
加齢に伴い、一般に、α-1酸性糖タンパク質濃度は上昇します。よって、選択肢 2 は誤りです。
心不全であれば、血流は減少していると考えられます。よって、選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 はその通りの記述です。
アルブミンは多くの薬物と結合し、特にインドメタシン、ワルファリンなどの酸性薬物と親和性が高いです。アルブミンの濃度が低下していれば、一般的に薬物の非結合分率が上昇しており、酸性薬物も非結合分率が上昇といえると考えられます。
以上より、正解は 1,4 です。
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