問 題
糖尿病患者が以下の処方せんを持って保険薬局に来局した。なお、この薬局には初めての来局である。
問252
処方されたこれらの薬剤の作用機序として、正しいのはどれか。2つ選べ。
- α-アミラーゼを競合的に阻害し、食後高血糖を抑制する。
- ATP感受性K+チャネルを遮断し、膵β細胞を脱分極させる。
- ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)を阻害し、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)の分解を抑制する。
- GLP-1受容体を直接刺激し、血糖値を低下させる。
- グルカゴンの分泌を抑制し、血糖値の上昇を抑制する。
問253
この患者への服薬指導時の対応として、適切でないのはどれか。2つ選べ。
- ボグリボースは、インスリンの分泌を促進すると説明する。
- ボグリボースの副作用として、腹部膨満、放屁が増加することを説明する。
- シタグリプチンは、血糖値をコントロールするホルモンであるインクレチンの作用を増強し、血糖値を下げると説明する。
- 低血糖の症状が現れた場合、砂糖水を飲むように説明する。
- 腎臓の働きが悪いと言われたことがあるかどうか確認する。
正解.
問252:3, 5
問253:1, 4
解 説
問252
ボグリボースは、α-グルコシダーゼ阻害薬です。腸管における、二糖類から単糖への分解を阻害することで、糖質の消化・吸収を遅延させて食後過血糖を改善します。
阻害するのは、α-アミラーゼではありません。α-アミラーゼとは、デンプン中のアミロースやアミロペクチンを、単糖類や二糖類に変換する酵素群のことです。つまり、α-アミラーゼは、多糖類→二糖類や単糖類への分解を担う酵素なのですが、α-グルコシダーゼは、二糖類→単糖類に分解する酵素であるという違いです。よって、選択肢 1 は誤りです。
ATP 感受性 K+ チャネル遮断による糖尿病薬は、SU 薬です。代表例はグリメピリドです。よって、選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 はその通りの記述です。
シタグリプチンが、DPP-4 阻害薬です。
GLP-1受容体を直接刺激するのは、リラグルチドや、エキセナチドです。よって、選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 はその通りの記述です。
DPP-4阻害薬は、GLP-1の分解を抑制します。それにより、GLP-1の作用である、グルカゴン分泌抑制を促進します。つまり、グルカゴンの分泌が抑制されます。グルカゴンは、血糖を上昇させるようなホルモンであるため、グルカゴンの分泌が抑制されることにより、血糖値の上昇が抑制されます。
以上より、正解は 3,5 です。
問253
ボグリボースは、α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)です。インスリンの分泌を促進するわけではないので、選択肢 1 は誤りです。
ボグリボースの副作用として、腸内ガス等の増加による腹部膨満、放屁増加等があります。よって、選択肢 2 は適切です。
シタグリプチンは、DPP-4 阻害薬です。DPP-4 とは、GLP-1(インクレチン)というホルモンを分解する酵素です。インクレチンとは、グルカゴン分泌抑制ホルモンです。DPP-4 が阻害されることで、インクレチンが分解されにくくなり、その結果グルカゴンの分泌が抑制されることで血糖値を減少させます。よって、選択肢 3 は適切です。
低血糖の症状が現れた時には、ブドウ糖を摂取するように説明します。砂糖水ではありません。よって、選択肢 4 は誤りです。α-GI を服用しているため、砂糖水に含まれる糖質が、単糖まで分解されず砂糖水を服用しても、低血糖症状が改善されません。
シタグリプチンは、重度腎機能障害のある患者には、血中濃度上昇することがあり禁忌となっています。そのため、選択肢 5 は適切です。
以上より、正解は 1,4 です。
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