薬剤師国家試験 第98回 問222-223 過去問解説

 問 題     

45歳女性。身長148cm、体重52kg。体表面積は1.44m2、クレアチニンクリアランスは40mL/minであった。StageⅡの卵巣がんに対する化学療法として次の治療を受けることになった。

問222

この処方を受けとった薬剤師が確認する内容として、適切でないのはどれか。1つ選べ。

  1. カルボプラチンの総投与回数。
  2. カルボプラチンを混和する液が注射用水であること。
  3. 腎機能が低下しているため、カルボプラチンの減量を考慮すること。
  4. パクリタキセルの点滴ルートに、DEHP(可塑剤の1種)が含まれないこと。
  5. パクリタキセルの投与を、0.22μm以下のメンブランフィルターを用いたインラインフィルターを通して行うこと。

問223

パクリタキセルとカルボプラチンは、細胞の増殖に影響を与える薬物である。細胞増殖に関連する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. がん原遺伝子は、正常な細胞増殖には関与しない。
  2. DNAの損傷は、DNA複製前に細胞周期のG2/Mチェックポイントにおいてチェックされる。
  3. パクリタキセルは、微小管の脱重合を阻害して細胞分裂を抑制する。
  4. カルボプラチンは、DNAの構成塩基に結合してDNA複製を阻害する。

 

 

 

 

 

正解.
問222:2
問223:3, 4

 解 説     

問222

卵巣がんの化学療法は、TC 療法と呼ばれる、パクリタキセル+カルボプラチンが標準的療法として推奨されています。(2010年版、卵巣がん治療ガイドラインより)。投与方法は3週毎の投与であり、2回目以降の減量や、投与日延期は各施設の基準に従います。よって、カルボプラチンの総投与回数を確認するのは、適切であるといえます。

カルボプラチンは、ブドウ糖液、生理食塩液、注射用水に溶解することができます。よって、わざわざ注射用水であることを確認する必要はないといえます。選択肢 2 は誤りです。

カルボプラチンは、シスプラチンの腎毒性を軽減させることを目的に作られた薬です。しかし、腎毒性が完全になくなったわけではありません。クレアチニンクリアランスが40 mL/min とかなり低く(基準値は、大体 100 前後)、カルボプラチンの減量を綱領するのは、適切であるといえます。

パクリタキセルは、DEHP 溶出の可能性があるため、DEHP フリーであることを確認するのは適切であると考えられます。

パクリタキセル注射液は、希釈液が過飽和状態にあり、パクリタキセルが結晶として析出する可能性があるので、 0.22 ミクロン以下のメンブランフィルターを用いたインラインフィルターを用いて投与するのが適切であるといえます。

以上より、正解は 2 です。

問223

がん原遺伝子とは、もともと正常な遺伝子であり、修飾を受けて異常をきたすと、その結果として正常細胞のがん化を引き起こすような遺伝子のことです。よって、正常な細胞増殖に関与する遺伝子です。選択肢 1 は誤りです。

DNA を複製するのは S 期です。DNA の損傷は、DNA 複製前の G1/S 期においてチェックされます。よって、選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3,4 はその通りの記述です。

以上より、正解は 3,4 です。

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