薬剤師国家試験 第97回 問127 過去問解説

 問 題     

以下の研究に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

1883年、遠洋航海に出ていた練習船の乗員376名のうち169名が脚気に罹るという事態が発生した。海軍医務局長の高木兼寛は、脚気の原因が食事の質であると考え、特に食事中の炭素:窒素比の値が15を大きく超えると発生することに注目した。

1884年、季節、乗組員、航路などの条件を一致させ、白米主体の食事から麦飯や洋食に変えただけで航海を実施したところ、脚気はほとんど発生せず、全員無事に帰国した。

鈴木梅太郎が脚気の予防因子を米糠から抽出するのに成功したのは、その25年以上も後のことである。

  1. この研究は、疫学の症例対照研究に相当する。
  2. この研究では、脚気の予防に有効な因子は炭水化物である可能性が示唆される。
  3. この研究では、白米に脚気の原因物質が含まれている可能性が排除できない。
  4. 鈴木梅太郎が得た抽出物の有効成分は、のちにビタミンB1であることがわかった。

 

 

 

 

 

正解.3, 4

 解 説     

症例対照研究とは、ある疾病をもつ患者群ともたない患者群に対して特定の要因への暴露状況を調査・比較することで、要因と疾病の関連を評価する研究手法のことです。別名後ろ向き研究とも呼ばれます。

この研究は、白米主体の食事という要因に暴露した集団と、していない集団を一定期間追跡し、脚気にかかる率に差がでるかどうかを調べた研究です。このような研究は、要因・対象研究と呼ばれます。よって、選択肢 1 は誤りです。

又、炭水化物は、白米にも麦飯にも含まれており、脚気の予防に有効な因子とは考えられません。よって、選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3,4 はその通りの記述です。

以上より、正解は 3,4 です。

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