薬剤師国家試験 第110回 問331 過去問解説

　問 題　　　　　

68 歳男性。身長 174 cm、体重 93 kg。既往歴として高血圧、脂質異常症、心房細動。薬物アレルギー歴無し。12 時頃、ゴルフ中に突然倒れた。救急隊到着時、本人から発語は見られていたが、次第に会話が困難になった。

救急搬送時 (14時)、頭部 MRI で左中大動脈領域に梗塞巣を認め、各種所見から心原性脳梗塞と診断された。また大動脈解離、急性膵炎は否定され、その他、心弁膜症、臓器出血の合併は認められなかった。

(搬送時の検査値)

血圧 162/102mmHg、血糖 130mg/dL、LDL-C 110mg/dL、HDL-C 60mg/dL、TG(トリグリセリド) 130mg/dL、eGFR 75mL/min/1.73m²、PT-INR 0.97、AST 18IU/L、ALT 19IU/L、APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間) 26秒 (基準値：25～32秒)、血小板 25×10⁴/μL

救急担当薬剤師が今後の治療について医師との共有事項として適切なのはどれか。2つ選べ。

1. ヘパリンナトリウムの静脈内投与による急性期治療
2. 予後改善効果を目的とした急性期におけるエダラボン投与
3. 脳浮腫が出現した場合のトルバプタン投与
4. 発症早期における新たな血栓防止のための抗血小板療法の開始
5. 急性期におけるDOAC(直接阻害型経口抗凝固薬)の使用

 

 

 

 

 

　解 説　　　　　

※※
本問は正解 3 つ、どれか 2 つを選んでいれば正解とされた問題です。
※※

選択肢 1,2 は妥当です。

選択肢 3 ですが
トルバプタンは、非ペプチド性バソプレシン受容体拮抗薬です。V2 受容体遮断薬で、利尿作用を示します。利尿薬は血液の脱水方向に作用するため、浮腫 (むくみ) 改善しますが、血栓や塞栓形成を 促進します。心原性脳梗塞である本症例には不適切と考えられます。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
心原性脳塞栓症の場合は「抗凝固薬」を使います。「抗血小板療法」ではありません。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 は妥当です。
DOAC として、エドキサバンなどが代表例です。

以上より、正解は 1,2,5 です。

類題 107-248249
https://yaku-tik.com/yakugaku/107-248/