問 題
5 歳男児。37 ℃ の微熱と咽頭痛があり、近医を受診したが、翌日に 39.2 ℃ まで上昇し、眼球結膜の充血及び全身に赤い発疹が出現したために近医より大学病院を紹介され受診した。
心臓超音波検査の結果、右冠動脈径 4.1 mm と拡大を認め、川崎病と診断された。入院後より大量免疫グロブリン静注療法とアスピリンの内服を開始した。
翌日には解熱し、1 週間後にほぼ症状は消失した。心臓超音波検査で右冠動脈径 3.8 mm と縮小傾向を確認し、2 週間後に退院となった。アスピリンは退院後も継続処方となっている。
薬剤師が退院時に患者家族へ伝える内容として適切なのはどれか。2 つ選べ。
- 免疫グロブリン静注療法は、退院後も定期的に実施する必要がある。
- アスピリンは、退院後も血栓予防のために服用することが重要である。
- アスピリンは、入院中と同じ用法・用量で服用する。
- アスピリン服用中に、インフルエンザと診断された場合には、すぐに主治医に連絡する。
- 麻しん、風しんワクチンは、退院後速やかに接種しても差し支えない。
解 説
川崎病は、全身の血管に炎症が起こる病気です。主に乳幼児に多く発症します。最も深刻な合併症は心臓冠動脈瘤です。心筋梗塞リスクがあります。
炎症抑制を目的として、大量免疫グロブリン療法、血栓予防などを目的としてアスピリン療法が行われます。
選択肢 1 ですが
川崎病では、1 回の免疫グロブリン療法で 8 割程度炎症改善が見られます。2 割程度は「不応例」となり、追加の免疫グロブリン投与やステロイド、インフリキシマブなどを用います。「免疫グロブリン静注療法は、退院後も定期的に実施する必要がある」わけではありません。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 は妥当です。
アスピリンは、退院後も血栓予防のため服用します。
選択肢 3 ですが
急性期有熱期間は、アスピリンとして 1 日体重 1 ㎏あたり 30 ~ 50 ㎎を 3 回に分けて経口投与します。一方、解熱後の回復期から慢性期は、1 日体重 1 ㎏あたり 3 ~ 5 ㎎ を投与します。「入院中と同じ用法・用量で服用」ではありません。選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 は妥当です。
アスピリンは、水痘やインフルエンザに感染している小児にライ (Reye) 症候群を起こすことがあります。ライ(Reye)症候群は、ある種の急性ウイルス感染に続発する傾向のある(特にサリチル酸系薬剤が使用された場合に多い)急性脳症と肝臓の脂肪浸潤です。
選択肢 5 ですが
投与した免疫グロブリンが血中にしばらく残存するため、生ワクチンの効果が減弱します。そのため、一般的に 3 ~ 6 ヶ月期間を空ける必要があります。「麻しん、風しんワクチンは、退院後速やかに接種しても差し支えない」わけではありません。選択肢 5 は誤りです。
ちなみに、例えばインフルエンザワクチンは 不活化ワクチン なので、免疫グロブリン投与後すぐにでも接種できます。
以上より、正解は 2,4 です。

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