薬剤師国家試験 第110回 問316-317 過去問解説

 問 題     

10 歳男児。小学校では他の児童と比べ、忘れ物が多く、授業中も落ち着きがなく集中力が続かないと担任から指摘され、専門医を受診したところ、注意欠陥・多動性障害 (ADHD) と診断された。

環境調整や保護者への支援などを行ったが効果が不十分なため、以下の薬剤が開始されることになった。

問316

患児と保護者に行う服薬指導として適切なのはどれか。2 つ選べ。

  1. このお薬はかまずに服用してください。
  2. 便の中にお薬が見える場合は、薬が吸収されていない可能性があるため、すぐに連絡してください。
  3. このお薬を飲むと食欲が低下することがあるため、症状がひどい場合は相談してください。
  4. このお薬の飲み忘れに気付いたら、何時でもかまいませんのでできるだけ早く服用してください。
  5. このお薬は、用法・用量を守って服用していれば依存性は出現しません。

問317

この処方薬に関する記述として正しいのはどれか。2 つ選べ。

  1. この男児が処方薬を持参して海外に 1 週間の家族旅行に行く場合、あらかじめ地方厚生局長の許可を受ける必要がある。
  2. 調剤されたこの処方薬を薬局が廃棄する場合には、廃棄後 30 日以内に都道府県知事に届け出なければならない。
  3. 医薬関係者向けの新聞又は雑誌など、主として医薬関係者等を対象として行う広告以外の広告は禁止されている。
  4. 薬局は、鍵をかけた堅固な設備内に保管しなければならない。
  5. 薬局で取り扱うには、この処方薬の適正流通管理システムへの登録が必要である。

 

 

 

 

 

正解.
問316:1, 3
問317:3, 5

 解 説     

問316

実習でコンサータ錠の添付文書を見たことがあるとかなり解きやすかったと思われます。特徴的な警告にぜひ一度目を通しておきましょう。


選択肢 1 は妥当です。

徐放性なので、噛んだりしてはいけません。


選択肢 2 ですが

薬物を放出した後の残渣が便中に排出されます。残渣のことをゴーストピルといいます。正常であることを説明します。選択肢 2 は誤りです。


選択肢 3 は妥当です。

食欲不振、不眠、頭痛が比較的よく報告される副作用です。


選択肢 4 ですが

「何時でもかまわない」わけではありません。原則、不眠の副作用を避けるため、午後は服用を避けます。また、絶対に翌日 2 日分飲んだりしてはいけません。選択肢 4 は誤りです。


選択肢 5 ですが

用法・用量を守って服用していれば依存症リスクは低いと考えられますが「出現しません」と言い切ることはできません。選択肢 5 は誤りです。


以上より、問 316 の正解は 1,3 です。

問317

メチルフェニデートは、第一種向精神薬です。これは基礎知識です。


選択肢 1 ですが

医療用向精神薬 を携帯して出入国する際、量に応じて「処方箋の写し」や「輸入確認証の手続き」が必要な場合もありますが「地方厚生局長の 許可」は不要です。選択肢 1 は誤りです。


選択肢 2 ですが

向精神薬 の 廃棄 は回収困難な方法で行う必要がありますが、廃棄後の届け出は不要です。選択肢 2 は誤りです。


選択肢 3 は妥当です。

麻薬及び向精神薬取締法 第 50 条の 18 の内容です。


選択肢 4 ですが

向精神薬の保管は、業務に従事する者が盗難の防止に必要な注意を払う場合を除き、かぎをかけた設備内でないとだめです。「鍵をかけた堅固な設備内に保管」する必要はありません。選択肢 4 は誤りです。


選択肢 5 は妥当です。

メチルフェニデートは、ナルコレプシー(病的眠気)や注意欠陥/多動性障害(ADHD)に用いられる薬です。適正使用・適正流通管理を目的として、流通管理システムによる一元管理が行われています。


以上より、問 317 の正解は 3,5 です。

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