問 題
35 歳男性。肘や膝に黄色っぽい隆起が見られるようになったため、心配になり医療機関を受診したところ、精査目的にて入院となった。身体所見及び検査値と家族歴は、以下のとおりであった。
(身体所見及び検査値)
身長 168cm、体重 76kg、血圧 118/76mmHg、LDL-C 262mg/dL、HDL-C 62mg/dL、TG(トリグリセリド) 145mg/dL、空腹時血糖 113mg/dL、HbA1c 5.9%、AST 102IU/L、ALT 22IU/L、CK(クレアチンキナーゼ) 4,215IU/L
(家族歴)
父親が 50 歳で心筋梗塞を発症
また問診の結果、3 ケ月前に他の医療機関で LDL コレステロール高値を指摘されロスバスタチンにて治療を行っていたが、1 ケ月前から筋肉痛や脱力感を自覚するようになったため、最近 1 週間は自己判断で服用を中止していることが分かった。
今回の診察で、肘や膝の皮膚の隆起は皮膚結節性黄色腫であることが判明し、アキレス腱にも著明な肥厚が見られた (X 線撮影により肥厚は 9.0 mm)。
問298
この患者に対して薬剤師がアセスメントを行うために備えるべき知識として適切なのはどれか。2 つ選べ。
- 食事療法に際し、炭水化物エネルギー比を 50 ~ 60 % とする。
- 運動療法を行う前に、動脈硬化性疾患のスクリーニングを実施する。
- LDL – C 管理目標値は 120 mg/dL である。
- 半年に一度の LDL アフェレシスを提案する。
- 筋肉痛と脱力感は、ロスバスタチンを継続投与しても自然に消失する。
問299
検査所見と診察の結果から判断してロスバスタチンを変更することになった。変更後の治療薬として適切なのはどれか。2 つ選べ。
- ピタバスタチン
- エゼチミブ
- ペマフィブラート
- エボロクマブ
- イコサペント酸エチル
問298:1, 2
問299:2, 4
解 説
問298
黄色っぽい隆起、検査値における LDL – C 高値、家族歴における早発性冠動脈疾患 (男性は 55 歳未満、女性は 65 歳未満で発症した冠動脈疾患) から「家族性高コレステロール血症」の症例です。
選択肢 1 は妥当です。
炭水化物エネルギー比 50 ~ 60%、低脂質・低コレステロール食が基本となります。
選択肢 2 は妥当です。
具体的なスクリーニングとしては 問診、心電図、運動負荷心電図、心エコー検査等で動脈硬化性疾患の評価を行います。冠動脈疾患等の合併が疑われるときは、先にそちらの治療を十分に行なってから運動療法開始という流れになります。
選択肢 3 ですが
管理目標値は より厳格です。本試験時点において、本症例では患者自身について既往歴がないと思われるため、100 mg/dL 以下が目標です。仮に心血管疾患経験者であれば 70 mg/dL 以下が目標となります。どちらにせよ「120」ではありません。選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 ですが
アフェレシスは血液を体外に取り出して、病因成分を除去した後に体内に戻すことです。LDL アフェレシスの頻度は 1 ~ 2 週に 1 回程度行われます。「半年に一度」ではありません。選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 ですが
スタチン使用で筋肉痛や脱力感は「横紋筋融解症」の可能性があります。スタチンの副作用であった場合「ロスバスタチンを継続投与しても自然に消滅」はしないと考えられます。選択肢 5 は誤りです。
以上より、問 298 の正解は 1,2 です。
問299
選択肢 1 ですが
スタチンの副作用が疑われる症例なので、別のスタチンへの変更は不適切と考えられます。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 は妥当です。
エゼチミブは小腸コレステロールトランスポーター (NPC 1L1) 阻害薬です。
選択肢 3,5 ですが
フィブラート系 及び イコサペント酸エチルの主な作用は 血中中性脂肪 (TG) の低下です。LDL – C をしっかり下げたい状況下において、ロスバスタチンからの変更としては不適切と考えられます。選択肢 3,5 は誤りです。
選択肢 4 は妥当です。
エボロクマブは、ヒト抗 PCSK9 モノクローナル抗体製剤です。PCSK9 とは、プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン 9 型のことです。LDL 受容体分解促進タンパク質である PCSK9 に高い親和性を示し、PCSK9 の LDL 受容体への結合を阻害します。この結果、LDL 受容体の分解を抑制します。
以上より、問 299 の正解は 2,4 です。

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