問 題
68 歳女性。15 年前、乳がんにより右乳房の切除術を受けた。再発なく経過していたが、3 年前に腰痛が出現し、骨転移、胸膜転移及び右胸水を認めたため、再発と診断された。オピオイドによる疼痛管理が開始され、1 年前からは緩和医療に移行し、処方 1 及び処方 2 の薬剤を使用していた。
その後、皮膚に対する副作用が強く出現したため、処方 1 の薬剤の貼付部位の変更や保湿を行ったが改善されず、処方 1 を処方 3 に変更した。
問276
処方 1 及び処方 3 の薬剤に関する記述として、正しいのはどれか。2 つ選べ。
- 処方 1 の薬剤は、定常状態で薬物を 0 次放出する。
- 処方 1 の薬剤の 1 枚当たりの有効成分含量は、フェンタニルに換算して 2.55 mg である。
- 処方 1 の薬剤からの有効成分の吸収量は、貼付部位の温度が上昇すると増大する。
- 処方 3 の薬剤は、シングルユニット型のリザーバー型製剤である。
- 処方 3 の薬剤は、初回分を処方 1 の薬剤の剥離直後に服用する。
問277
処方 3 の薬剤に変更後、持続痛は適切に管理されていた。しかし、6 ケ月を過ぎた頃、突出痛に対する処方 2 の薬剤の効果が不十分となった。医師は、処方 2 の薬剤の投与量を増量したが、服用後に不快な眠気が続くようになったため、処方 2 を処方 4 に変更した。
薬剤師が患者に伝える内容として、適切なのはどれか。2つ選べ。
- 処方 2 の薬剤に比べ作用の発現が速いので、突出痛に対し迅速に対応できる。
- 最小用量から開始し、1 回の最適量は、症状に応じて医師が段階的に調節する。
- 痛みが強いときは、錠剤を噛み砕いてから舌下におく。
- 口の中が乾燥している場合は、口に水を含み、含んだ水で溶かすように使用する。
- 突出痛に加え、持続性疼痛が増強されたときにも使用する。
問276：2, 3
問277：1, 2
解 説
問276
選択肢 1 ですが
注 1 の図から、処方 1 は「マトリックス型」です。マトリックス型製剤は、表面から徐々に薬物が放出されます。マトリックス型製剤は、表面から徐々に薬物が放出されます。よって、薬物の拡散距離が時間とともに段々長くなっていきます。薬物の放出量（単位面積当たり）は、時間の平方根に比例するという Higuchi の式が知られています。「薬物を 0 次放出」、つまり「一定速度で放出」ではありません。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 は妥当です。
注 1 から「塩係数 1.57」とわかります。これは フェンタニル 1mg に対して、フェンタニルクエン酸塩になると 1.57mg となる、ということです。従って、フェンタニルクエン酸テープ 4mg であれば、4 × 1.00/1.57 ≒ 2.55 mg です。
選択肢 3 は妥当です。
電気毛布やこたつ等の熱源に接さないように注意が必要です。
選択肢 4 ですが
徐放性製剤の放出制御機構は「リザーバー型」と「マトリックス型」に大別されます。
添加物に注目すると、ヒドロキシプロピルセルロース (HPC) があります。水を加えるとゲル化するため、徐放性のマトリックス基剤として用いられます。従ってリザーバー型ではなく「マトリックス型製剤」と考えられます。
ちなみに、ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステルといえば腸溶性コーティングですが、剤形が素錠とあるためコーティング錠ではありません。溶出性の調整などの目的で添加されていると考えられます。
選択肢 5 ですが
処方 1 を剥離してからしばらくは、ある程度血中濃度が高いはずです。適度に時間をおいてから服用します。「初回分を処方 1 の薬剤の剥離直後に服用」ではありません。
以上より、問 276 の正解は 2,3 です。
問277
選択肢 1 は妥当です。
舌下錠なので、速やかな薬効効果が期待できます。
選択肢 2 は妥当です。
本試験時点において、1 回用量の上限は 800 μg です。
選択肢 3,4 ですが
飲み込んでは意味がなくなるため、噛み砕いたり、口に含んだ水で溶かすように使用してはいけません。口が渇く場合は、少量の水で口内を湿らせてから使用します。選択肢 3,4 は誤りです。
選択肢 5 ですが
持続性疼痛が適切に管理されている場合における突出痛に対して使用します。「持続性疼痛が増強されたとき」に使用する薬ではありません。選択肢 5 は誤りです。
以上より、問 277 の正解は 1,2 です。
類題 104-284285
https://yaku-tik.com/yakugaku/104-284/
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