問 題
25 歳女性。身長 160 cm、体重 55 kg。朝、自室から起床してこないため、心配に思った家族が部屋の中に入ったところ、ベッドの上で仰向けになって意識を失っていた。呼びかけに反応しなかったため、救急隊を要請した。
病院搬送時の意識レベルは Japan Coma Scale (JCS) 200、血圧 100/55 mmHg、脈拍 105 拍/分、呼吸 15 回/分、体温 36.0 ℃ であった。採取した尿を用いて定性試験でバルビツール酸類が強陽性であった。
家族からの情報によると、女性は以前よりてんかん治療のためフェノバルビタールを常用しており、たびたび体調を崩していた。胃内容物を分析したところ、フェノバルビタールが検出され、過量摂取による意識障害と診断された。
問272
薬剤師がフェノバルビタールの血清中濃度を測定したところ、65 μg/mL であった。医師は、球形吸着炭の 6 時間ごとの繰り返し投与、及び炭酸水素ナトリウム注射液の持続投与を開始した。2 日後、フェノバルビタールの血清中濃度は 40 μg/mL となり、意識は徐々に回復した。
フェノバルビタールの体内動態に及ぼす球形吸着炭及び炭酸水素ナトリウムの作用として、適切なのはどれか。2 つ選べ。
- 血漿タンパク結合の阻害
- 肝取り込みの促進
- 腸肝循環の抑制
- 尿細管分泌の促進
- 尿細管再吸収の抑制
問273
3 日後には、この患者の意識は完全に回復した。しかし、病棟薬剤師が患者の異変に気付き、医師とともに症状を確認したところ、一過性の退薬症状が出現したと考えられた。
観察された症状として適切なのはどれか。2 つ選べ。
- 不安
- 傾眠
- 手指振戦
- 発疹
- 過度の心拍数低下
問272:3, 5
問273:1, 3
解 説
問272
吸着炭は、腸肝循環によって体内を循環する有害物質を、消化管内で物理的に吸着して排出します。
炭酸水素ナトリウム投与 → 尿のアルカリ化 です。また、フェノバルビタールが「バルビツール酸系」であることは基礎知識です。
酸性薬物であれば、尿アルカリ化により 「酸塩基反応で分子型の割合減少」 → 「尿細管再吸収抑制」が適切と判断できるのではないでしょうか。
以上より、問 272 の正解は 3,5 です。
問273
退薬症候は、離脱症状とも呼ばれます。
急に薬を減薬したり中止した際の症状のことです。
てんかんの実体が神経の過剰興奮で、フェノバルビタールで抑制していて、急に減薬したような状況です。そのため、神経が興奮性に偏った結果として、身体的、精神的症状に現れると考えられます。
選択肢の中で
「傾眠」「過度の心拍数低下」は、神経「抑制」と関連性が高いと考えられます。不適切です。選択肢 2,5 は誤りです。
また
離脱症状で発疹が出るのは、ステロイド系などを使用していた場合が妥当と考えられます。フェノバルビタールの離脱症状としては関連性が低いと思われます。選択肢 4 は誤りです。
以上より、問 273 の正解は 1,3 です。

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