薬剤師国家試験 第110回 問262-263 過去問解説

 問 題     

65 歳男性。2 型糖尿病のため処方  1 ~ 3 にて治療していた。

最近、血糖コントロールが不良であることから、今回、処方 3 が処方 4 へ変更となり、処方 1、2 及び  4 が記載された処方箋を持ってかかりつけ薬局を訪れた。

問262

処方変更に関して、医師に疑義照会すべき内容はどれか。2 つ選べ。

  1. セマグルチドの投与剤形
  2. セマグルチド錠の服用タイミング
  3. セマグルチド錠の開始用量
  4. セマグルチド錠とグリメピリド錠の併用禁忌
  5. セマグルチド錠とダパグリフロジン錠の併用禁忌

問263

処方1~4のいずれかの薬物の作用機序として、正しいのはどれか。2 つ選べ。

  1. グルカゴン様ペプチド – 1 (GLP – 1) 受容体を刺激して、膵臓からのインスリン及びグルカゴン分泌を促進する。
  2. ジペプチジルペプチダーゼ – 4 (DPP – 4) を阻害して、小腸から分泌されるインクレチンの分解を抑制する。
  3. アンジオテンシン変換酵素 (ACE) を阻害して、血中でのアンジオテンシンⅠの生成を抑制する。
  4. ミトコンドリア呼吸鎖複合体Ⅰを阻害して、血糖値依存的なインスリン分泌を促進する。
  5. AMP 活性化プロテインキナーゼ (AMPK) を活性化して、肝臓での糖新生を抑制する。

 

 

 

 

 

正解.
問262:2, 3
問263:2, 5

 解 説     

問262

【セマグルチド 経口薬について】
セマグルチドは GLP – 1 受容体作動薬です。胃の内容物により吸収低下が見られるため、空腹時服用です。

経口薬の規格は 3mg、7mg、14mg の 3 種類です。通常、成人には 1 日 1 回 7 mg を維持用量とし経口投与しますが、1 日 1 回 3 mg から開始し、4 週間以上投与した後 7mg に増量します。1 日 1 回 7 mg を 4 週間以上投与しても効果不十分な場合には、1 日 1 回 14 mg に増量できます。


処方 4 は
「いきなり 7mg」である点
「朝食後」とされている点について、疑義照会すべきです。


以上より、問 262 の正解は 2,3 です。

問263

選択肢 1 ですが
「膵臓からのインスリン分泌を促進し、グルカゴン分泌を抑制」であれば、セマグルチドの作用機序になります。選択肢 1 は誤りです。


選択肢 2 は妥当です。

処方 3 のシタグリプチンの作用機序です。


選択肢 3 ですが

ACE を阻害することで アンギオテンシン「」の生成を抑制します。アンギオテンシン「Ⅰ」の生成ではありません。選択肢 3 は誤りです。


選択肢 4 ですが

NAMPT (NAD合成系酵素) 遺伝子 及び ミトコンドリア呼吸鎖複合体Ⅰへ作用する イメグリミン の作用機序に関する記述です。処方 1 ~ 4 のいずれの薬物にも該当しません。選択肢 4 は誤りです。


選択肢 5 は妥当です。

メトホルミンについての記述です。


以上より、問 263 の正解は 2,5 です。

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