薬剤師国家試験 第110回 問248-249 過去問解説

 問 題     

16 歳女性。夜間の睡眠を十分にとっていたにもかかわらず、高校での授業中に耐え難い眠気が繰り返し生じ、居眠りすることが多くなった。そのため睡眠クリニックを受診し、指導された通りに生活習慣の改善を実施したが、2 週間経っても居眠りが消失しなかった。

終夜睡眠ポリグラフ検査や反復睡眠潜時検査の結果からナルコレプシーと診断され、生活習慣の改善を継続するとともに、以下の処方が開始となった。

問248

処方 1 の薬剤及び用法について、この患者に説明する内容として適切なのはどれか。2 つ選べ。

  1. 依存性が形成される可能性があること。
  2. 流通管理のため、空の PTP シートを回収すること。
  3. 脱毛の可能性があること。
  4. 服用開始後、頭痛が生じる可能性があること。
  5. 服用期間中はカフェインを含む飲料の摂取は避けること。

問249

服薬コンプライアンスは良好であったが、約 1 ケ月服用しても授業中の居眠り等の症状は改善しなかったため、モダフィニルが徐々に増量され、3 ケ月後には 300 mg/日 となった。

モダフィニルの増量中に、「眠りにつくときに怖い夢ばかりみる」との訴えがあったため、処方 2 が追加された。その後も居眠り等の症状が十分に改善されなかったため、モダフィニル錠は、処方 3 に変更された。

処方 2 及び処方 3 のいずれかの薬物の作用機序として、正しいのはどれか。2 つ選べ。

  1. γ – アミノ酪酸 (GABA) 及びヒスタミンの遊離を促進する。
  2. アデノシン A1 及び A2A 受容体を遮断する。
  3. 非特異的にホスホジエステラーゼを阻害する。
  4. ドパミン及びノルアドレナリンの再取り込みを阻害する。
  5. セロトニン及びノルアドレナリンの再取り込みを阻害する。

 

 

 

 

 

正解.
問248:1, 4
問249:4, 5

 解 説     

問248

モダフィニルは第一種向精神薬です。これは基礎知識です。


選択肢 1 は妥当です。

第一種向精神薬であるため、依存性形成の可能性がある という記述は妥当です。


選択肢 2 ですが

空の PTP シート回収は、サリドマイド製剤の流通管理において行われています。モダフィニルについては不要です。選択肢 2 は誤りです。


選択肢 3 ですが

脱毛は「抗がん剤」の副作用として代表的ですが、モダフィニルの副作用としては、可能性が小さいと思われます。可能性がないとはいえなくとも、患者にわざわざ説明する内容ではありません。選択肢 3 は不適切です。


選択肢 4 は妥当です。

頭痛、動悸、口渇が副作用としてよく知られています。


選択肢 5 ですが

眠気を感じたら、カフェインを適宜摂取するのも効果的です。「服用期間中はカフェインを含む飲料の摂取は避ける」必要はありません。選択肢 5 は誤りです。


以上より、問 248 の正解は 1,4 です。

問249

クロミプラミンは、三環系抗うつ剤、メチルフェニデートは ナルコレプシー (病的眠気) や注意欠陥/多動性障害 (ADHD) に用いられる第一種向精神薬です。


選択肢 1 ですが
GABA が遊離促進されると神経興奮が抑制されます。また、ヒスタミン遊離が促進されると、くしゃみ・鼻水などが出やすくなります。「怖い夢ばかり見る」という訴えや、モダフィニルの代用薬としての作用機序ではないと思われます。選択肢 1 は誤りです。


選択肢 2,3 ですが

これらは「カフェイン」の作用機序です。

また、アデノシン受容体遮断薬としては、パーキンソン病の治療薬として用いられるイストラデフィリンが アデノシン A2A 受容体遮断薬であることをおさえておきましょう。処方 2 及び 処方 3 のいずれかの薬物の作用機序では、ありません。選択肢 2,3 は誤りです。


選択肢 4,5 は妥当です。
選択肢 4 が処方 3 のメチルフェニデート塩酸塩、選択肢 5 が処方 2 のクロミプラミンに、それぞれ対応します。


以上より、問 249 の正解は 4,5 です。

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