薬剤師国家試験 第110回 問244-245 過去問解説

 問 題     

病院で、以下の事故事例を用いて、抗がん剤シクロホスファミド水和物の調製に関する新人薬剤師の研修会を行うことになった。

<事故事例>

シクロホスファミド水和物の溶解に閉鎖式薬物移送システム (CSTD) で調製するところ、その器具がなかった。薬剤師は安全キャビネットを使用して、シクロホスファミド水和物 500 mg (凍結乾燥粉末) を生理食塩液 25 mL で溶解させているときに 18 G の注射針がシリンジから外れ、誤って薬液を飛散させてしまった。

問244

シクロホスファミド水和物の溶解調製及び事故時の対応に関して、新人薬剤師が指導を受ける内容として正しいのはどれか。2 つ選べ。

  1. 溶解液はバイアル内を陽圧に保ちながら調製を行う。
  2. 調製にはルアーロック型のシリンジを使用する。
  3. 外径がより細い 32 G の注射針を用いて調製する。
  4. 飛散した薬液は安全キャビネット内で中心部から周囲に向かって拭き取る。
  5. 薬液を拭き取った後は水を含ませたガーゼで拭き、さらに消毒用エタノールを含ませたガーゼで清拭する。

問245

この過程で排出されたものの廃棄に関して、新人薬剤師が備えておくべき知識として正しいのはどれか。2 つ選べ。

  1. 使用した注射針は、図Aに示した形状のマークをつけた容器に入れて廃棄することが推奨されている。
  2. 拭き取りに使用したガーゼは、事業系一般廃棄物として扱う。
  3. 使用後のバイアルは、特別管理産業廃棄物として扱う。
  4. 使用したシリンジは、事業系一般廃棄物として扱う。
  5. 調製時に用いたディスポーザブル手袋は、特別管理一般廃棄物として扱う。

 

 

 

 

 

正解.
問244:2, 5
問245:1, 3

 解 説     

問244

選択肢 1 ですが
バイアル内が陽圧、つまり圧力が高い状態だと、バイアル内の抗がん剤が押し出されて飛散してしまいます。「陰圧」に保ちながら調製です。選択肢 1 は誤りです。


選択肢 2 は妥当です。

抗がん剤の調製なので、ルアーロック型のシリンジを使用します。


選択肢 3 ですが

数字が大きいほど細い注射針です。調製時のシリンジの注射針は 18 ゲージ程度のものを使用します。針が細いと泡立ちやすくなります。「32G」は不適切です。選択肢 3 は誤りです。


選択肢 4 ですが

中心から外側にふき取ると、ふき取り終わる際に、外に液が出る可能性があります。外側から中心に向かい拭き取るのが適切と考えられます。選択肢 4 は誤りです。


選択肢 5 は妥当です。


以上より、問 244 の正解は 2,5 です。

類題 107-85
https://yaku-tik.com/yakugaku/107-085/

問245

廃棄物は一般廃棄物産業廃棄物に分類されます。一般廃棄物は、産業廃棄物以外です。産業廃棄物は、事業活動に伴って生じる廃棄物のうち、廃棄物処理法で定義された 20 種類の廃棄物です。


選択肢 1 は妥当です。

図 A はバイオハザードマークです。注射針などがバイオハザードの典型です。使用済み針を入れる廃棄容器に表示することが推奨されています。


選択肢 2,4,5 ですが

抗がん剤が付着したガーゼやシリンジなので、一般廃棄物として扱うのは不適切です。選択肢 2,4,5 は誤りです。


選択肢 3 は妥当です。

特別管理産業廃棄物は、産業廃棄物の中でも特に指定されたものです。


以上より、問 245 の正解は 1,3 です。

類題 105-244245
https://yaku-tik.com/yakugaku/105-244/

類題 102-244245
https://yaku-tik.com/yakugaku/102-244/

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