薬剤師国家試験 第110回 問236-237 過去問解説

 問 題     

50 歳男性。慢性腎臓病ステージ 3b。脳梗塞急性期で経口摂取できず、3 日間末梢静脈栄養を投与していたが、栄養不足が懸念されることから、主治医より完全静脈栄養 (Total Parenteral Nutrition:TPN) の処方設計について薬剤師に相談があり、協働して実施することになった。

問236

処方を設計する際に、検討すべきこととして適切なのはどれか。2 つ選べ。

  1. 腎機能への影響を考慮し、分岐鎖アミノ酸 (BCAA) を投与する。
  2. 低リン血症のリスクがあるため、リン酸二カリウム製剤を投与する。
  3. 代謝性アルカローシスのリスクがあるため、生理食塩液や塩化カリウム製剤を投与する。
  4. 低カルシウム血症のリスクがあるため、活性型ビタミン D3 製剤を投与する。
  5. 腎不全が進行した場合、カリウム製剤を積極的に投与する。

問237

この男性への TPN の処方として、ブドウ糖含有率 50 % の基本輸液 500 mL、脂肪乳剤 (ダイズ油 20 %) 100 mL、アミノ酸を 5 % 含む総合アミノ酸輸液 375 mL、高カロリー輸液用微量元素製剤  2 mL、総合ビタミン剤 5 mLを設計した。Atwater 係数を用いて計算した場合、この処方における非タンパク質カロリー/窒素比 (NPC/N) の値として最も近いのはどれか。1 つ選べ。

ただし、脂肪乳剤 (ダイズ油 20 %) 100 mL に含まれる熱量を 200 kcal、アミノ酸は 16 % の窒素を含むものとする。

  1. 100
  2. 200
  3. 300
  4. 400
  5. 500

 

 

 

 

 

正解.
問236:1, 4
問237:4

 解 説     

問236

選択肢 1 は妥当です。
腎不全用アミノ酸輸液に BCAA が多く含まれることを実習で見聞きしたのではないでしょうか。


選択肢 2,4 ですが

腎機能が低下すると、ビタミン D の働きが障害されます。結果、Ca 吸収が低下します。低カルシウム血症リスクがあるため、活性型ビタミン D3 製剤投与などが行われます。

また、尿中 P 排泄機能が低下し、血液中 P 濃度が上昇します。低リン血症ではなく、高リン血症のリスクがあると考えられます。選択肢 2 は誤りです。選択肢 4 は妥当です。


選択肢 3 ですが

慢性腎不全に伴って、代謝性「アシドーシス」のリスクが高まります。「アルカローシス」ではありません。選択肢 3 は誤りです。


選択肢 5 ですが

カリウム「制限」が、腎不全が進行した場合 推奨されます (ステージ 3b 以降が本試験時点では推奨) 。「カリウム製剤を積極的に投与」ではありません。選択肢 5 は誤りです。


以上より、問 236 の正解は 1,4 です。

問237

基本輸液 500mL のうち 50% がブドウ糖なので、ブドウ糖が 250g です。ブドウ糖 1g = 4 kcal なので、250 × 4 = 1000 kcal です。脂肪乳剤 100 L に含まれる熱量 200 kcal を加えると、1000 + 200 = 1200 kcal です。これが、非タンパク質カロリーです。


アミノ酸を 5% 含む アミノ酸輸液 375 mL 中に、アミノ酸が 375 × 0.05 g 含まれます。そして、アミノ酸に 16% の N を含みます。窒素は、375 × 0.05 × 0.16 = 3 gです。

従って
NPC/N = 1200/3 = 400 です。


以上より、問 237 の正解は 4 です。

類題 107-343
https://yaku-tik.com/yakugaku/107-343/

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