薬剤師国家試験 第110回 問232-233 過去問解説

 問 題     

61 歳女性。肺アスペルギローマの既往。急性リンパ性白血病と診断され、シタラビン大量療法が施行された。療法開始から 15 日目に固形成分を含まない水様性便となったため、副作用の対応として処方 1 ~ 4 の薬剤で治療開始された。

しかし、症状が悪化したことから、5 日後に糞便検体を採取して検査した結果、toxin A 及び toxin B が陽性であった。

Clostridioides difficile 感染症の院内での拡大を防止するため、院内のチームで対策を検討することになった。

問232

この患者に処方された処方 1 ~ 4 の薬剤のうち、Clostridioides difficile 感染症を誘発し、下痢を悪化させた可能性のある薬剤はどれか。1 つ選べ。

  1. メロペネム点滴静注用
  2. イトラコナゾール錠
  3. ロペラミド塩酸塩カプセル
  4. メトクロプラミド錠
  5. 酪酸菌 (宮入菌) 製剤錠

問233

この患者から広がる可能性がある院内感染症とその防止のため、薬剤師が備えておくべき知識として、正しいのはどれか。2 つ選べ。

  1. この感染症の主な感染経路は間接伝播である。
  2. この原因菌は芽胞を形成するので、この患者が使用した食器の消毒には煮沸消毒(100℃、30分)が有効である。
  3. 消毒用エタノールによる手指の消毒が有効である。
  4. クレゾール石けんと流水による手洗いが有効である。
  5. 便座等の消毒には次亜塩素酸ナトリウムが有効である。

 

 

 

 

 

正解.
問232:1
問233:4, 5

 解 説     

問232

Clostridioides difficile (旧 Clostridium difficile :CD) が異常増殖するのは、抗菌薬投与による腸内細菌叢の環境変化が原因であることが多いです。処方 1 ~ 4 の中から考えれば、抗菌薬の一種である メロペネム が誘発した可能性があります。

イトラコナゾールについて迷ったかもしれませんが、イトラコナゾールは「抗真菌薬」です。


以上より、問 232 の正解は 1 です。

問233

選択肢 1 ですが
接触感染が主な感染経路です。間接伝搬もありますが、主な感染経路は「間接伝搬」ではありません。選択肢 1 は誤りです。


選択肢 2 ですが

芽胞を形成するため、煮沸消毒では殺滅できず有効ではありません。選択肢 2 は誤りです。


選択肢 3 ですが

芽胞を形成するため、エタノールは無効です。「消毒用エタノールによる手指の消毒が有効」ではありません。選択肢 3 は誤りです。


選択肢 4,5 は妥当です。

クレゾール石けんと流水による手洗いや、次亜塩素酸ナトリウムによる消毒は 有効な方法です。


以上より、問 233 の正解は 4,5 です。

類題 98-128
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