薬剤師国家試験 第110回 問165-166 過去問解説

 問 題     

6 歳男児。咽頭痛のため耳鼻咽喉科を受診した。血液検査で抗ストレプトリジン O (ASO) 抗体と抗ストレプトキナーゼ (ASK) 抗体の上昇が認められ、A 群溶血性レンサ球菌 (溶連菌) 咽頭炎と診断された。

問165

A 群溶血性レンサ球菌 (溶連菌) 咽頭炎に関する記述として、正しいのはどれか。2 つ選べ。

  1. 空気感染が、主な感染経路である。
  2. 起因菌は、血液寒天培地上で溶血反応を示す。
  3. 特徴的な所見として、舌に白色の水疱を認めることが多い。
  4. 合併症として、急性糸球体腎炎を認めることがある。
  5. 自然治癒することはない。

問166

レンサ球菌属に対して抗菌作用を示す薬物に関する記述として、正しいのはどれか。2 つ選べ。

  1. セファレキシンは、細菌のピルビン酸転移酵素を阻害して、UDP – N – アセチルムラミン酸の合成を抑制する。
  2. エリスロマイシンは、細菌のジヒドロ葉酸還元酵素を阻害して、テトラヒドロ葉酸の生成を抑制する。
  3. アモキシシリンは、細菌のペニシリン結合タンパク質に共有結合して、不可逆的にトランスペプチダーゼ活性を阻害する。
  4. クリンダマイシンは、細菌のリボソーム 50S サブユニットに結合して、ペプチド転移酵素反応を阻害する。
  5. アジスロマイシンは、細菌のリボソーム 30S サブユニットと結合して、アミノアシル tRNA が mRNA と結合するのを阻害する。

 

 

 

 

 

正解.
問165:2, 4
問166:3, 4

 解 説     

問165

大人もかかるのですが、特に子どもに多いのどの病気の 1 つが溶連菌です。毎年春から夏 及び 冬に流行する傾向があります。


選択肢 1 ですが

空気感染できる感染症は 麻疹、水痘、結核です。溶連菌の主な感染経路は飛沫感染です。選択肢 1 は誤りです。


選択肢 2 は妥当です。

血液寒天培地は、基礎培地に動物の血液を 5~10 % 加えたものです。栄養要求の厳しい細菌培養や、溶血毒素の種類判定に用いられます。


選択肢 3 ですが

溶連菌といえば、いちご舌と呼ばれる赤くブツブツしたイチゴのような見た目になる状態が特徴です。「白色の水疱」ではありません。ちなみに、頬がりんごのように赤くなるのがりんご病とも呼ばれる「伝染性紅斑」です。意識して区別するとよいです。選択肢 3 は誤りです。


選択肢 4 は妥当です。

急性糸球体腎炎は、大多数が A 群 β 溶血性レンサ球菌感染に続発します。


選択肢 5 ですが

溶連菌は合併症リスク軽減のため、ペニシリン 10 日間内服が行われます。無治療でも抗体がつくられることで自然治癒が期待できます。「自然治癒することはない」という記述は不適切です。選択肢 5 は誤りです。


以上より、問 165 の正解は 2,4 です。

問166

選択肢 1 ですが
セファレキシンは、セフェム系抗生物質です。セフェム系抗菌薬は、β-ラクタム系抗菌薬の一種です。β-ラクタム系抗菌薬は、細胞壁合成阻害薬です。細菌が細胞壁を合成する際に必要となるペニシリン結合タンパク質 (PBP) の働きを阻害します。「ピルビン酸転移酵素を阻害」ではありません。選択肢 1 は誤りです。


選択肢 2 ですが

エリスロマイシンは、14 員環マクロライド系抗生物質です。50S サブユニットに結合し、タンパク質合成を阻害します。「ジヒドロ葉酸還元酵素を阻害」ではありません。選択肢 2 は誤りです。


選択肢 3,4 は妥当です。

ペニシリン系のアモキシシリン 及び リンコマイシン系のクリンダマイシンについての記述です。


選択肢 5 ですが

アジスロマイシンは、15 員環マクロライドです。細菌のリボソーム 50S サブユニットに結合し、タンパク質合成を阻害します。「30S サブユニットと結合」ではありません。選択肢 5 は誤りです。


以上より、問 166 の正解は 3,4 です。

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