薬剤師国家試験 第110回 問135 過去問解説

 問 題     

ある輸入果実が農薬 A で汚染されていることが判明し、その残留濃度は 0.05 ppm であった。

我が国では、この果実に対して、農薬 A の個別の残留基準値は設定されていない。また、農薬 A の許容一日摂取量 (ADI) は 0.029 mg/kg 体重/日、急性参照用量 (ARfD) は 0.3 mg/kg 体重である。

農薬 A のリスク評価及びリスク管理に関する記述として、正しいのはどれか。2 つ選べ。

  1. ARfD は、24 時間又はそれより短時間の経口摂取でヒトの健康に悪影響を示さないと推定される体重 1 kg 当たりの摂取量である。
  2. ARfD は、慢性毒性試験で得られる最大無作用量 (NOAEL) 又は最小作用量 (LOAEL) を安全係数で除して求められる。
  3. ADI は、非意図的汚染物質をヒトが一生涯にわたって摂取し続けても健康への悪影響がないと考えられる体重 1 kg当たり、1 日当たりの摂取量である。
  4. 体重 50 kg の成人がこの果実を仮に毎日 40 kg 食べ続けても、農薬 A の ADI を超える摂取量とはならない。
  5. 一律基準 (0.01 ppm) が適用されるため、この果実を販売することは食品衛生法違反である。

 

 

 

 

 

正解.1, 5

 解 説     

選択肢 1 は妥当です。
急性参照用量 (ARfD:acute reference dose) に関する記述です。


選択肢 2 ですが

ARfD は、24 時間又はそれより短時間の経口摂取に関する量なので、「慢性」毒性試験で得られる量ではなく「急性」毒性試験で得られる量を、安全係数で除して求めます。選択肢 2 は誤りです。


選択肢 3 ですが

ADI は、農薬のように「意図的汚染物質」が対象です。「非意図的汚染物質」が対象の場合は TDI:Tolerable Daily Intake 耐容一日摂取量が設定されます。選択肢 3 は誤りです。


選択肢 4 ですが
1ppm = 100 万分の 1 = 10-6 です。仮に 濃度 1ppm であれば
果実 40kg に 40 × 103 × 10-6 = 40 × 10-3 g の農薬が含まれます。

実際の残留濃度は 0.05 ppm なので、果実 40 kg 食べると
 (40 × 10-3) × 0.05 = 2 × 10-3 g = 2mg/日 の農薬を摂取することになります。

体重 50 kg であれば
0.029 × 50 = 1.45 mg/日 が ADI なので、ADI を超えます。

選択肢 4 は誤りです。


選択肢 5 は妥当です。

ポジティブリスト制度についての記述です。


以上より、正解は 1,5 です。

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