薬剤師国家試験 第110回 問131 過去問解説

 問 題     

化学物質の毒性又は毒性発現機序に関する記述として正しいのはどれか。2 つ選べ。

  1. 吸入曝露された六価クロムは、鼻中隔穿孔及び肺がんを起こす。
  2. カドミウムは、中枢神経系に移行し、視野狭窄及び運動失調を起こす。
  3. フェノトリンは、ナトリウムチャネルを開放状態にして、神経伝達を阻害する。
  4. グリホサートは、アセチルコリンエステラーゼを阻害して副交感神経の興奮を起こす。
  5. 2,3,7,8 – テトラクロロジベンゾ – p – ジオキシンは、プレグナン X 受容体 (PXR) に結合し、種々の遺伝子の転写を活性化する。

 

 

 

 

 

正解.1, 3

 解 説     

選択肢 1 は妥当です。
六価クロムの毒性についての記述です。


選択肢 2 ですが

カドミウムはイタイイタイ病の原因物質です。腎障害からカルシウムの吸収障害を引き起こし、骨強度が極度に低下しました。「中枢神経系に移行し、視野狭窄及び運動失調」ではありません。選択肢 2 は誤りです。


選択肢 3 は妥当です。

フェノトリンは、ピレスロイド系化合物です。


選択肢 4 ですが

グリホサート は、ラウンドアップとして用いられる除草剤です。リン酸+グリシンの構造を有する、非選択性のアミノ酸系除草剤です。

作用機構はアミノ酸生合成に関与するシキミ酸経路において、5 – エノールピルビルシキミ酸 – 3 – リン酸合成酵素(EPSPS)の阻害によるタンパク質の生合成阻害と考えられています。「アセチルコリンエステラーゼ阻害」ではありません。選択肢 4 は誤りです。


選択肢 5 ですが

2,3,7,8 – テトラクロロベンゾ – p ジオキシンは、最も毒性が強く基準とされる ダイオキシン類の一種です。そして、ダイオキシン類が結合するのは 芳香族炭化水素受容体 (AhR) です。プレグナン X 受容体 (PXR) に結合して活性化するのはリファンピシンです。選択肢 5 は誤りです。


以上より、正解は 1,3 です。

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