薬剤師国家試験 第110回 問113 過去問解説

 問 題     

幹細胞に関する記述として、正しいのはどれか。2 つ選べ。

  1. 造血幹細胞は、単能性幹細胞である。
  2. 組織幹細胞は、非対称な細胞分裂をしない。
  3. 人工多能性幹細胞 (iPS 細胞) は、成体の体細胞に複数の遺伝子を導入し、分化状態を初期化することにより作製される。
  4. 胚性幹細胞 (ES 細胞) は、初期胚の内部細胞塊から樹立される。
  5. ES 細胞は、全能性を持つ。

 

 

 

 

 

正解.3, 4

 解 説     

選択肢 1 ですが
単能性とは「一つにしか分化しない」という意味です。造血幹細胞が、赤血球、白血球、血小板といった様々な血液細胞に分化できることは基礎知識です。従って「造血幹細胞は、単能性」ではありません。選択肢 1 は誤りです。


選択肢 2 ですが

「組織幹細胞の細胞分裂の対称性」について知っていたり、意識して学んできた人はそれほどいないと思われます。

本選択肢の考え方としては、仮に非対称な細胞分裂をしないとすると…? とするのが一例としてあげられます。すなわち、組織幹細胞は非対称な細胞分裂をしない → きれいに半分ずつ分かれる形式の細胞分裂しかしない と仮定してみます。

すると、様々な組織に分化できないのではないか…? → 正しい記述ではない と推測できるのではないでしょうか。本番での考え方の一例として、参考になれば幸いです。選択肢 2 は誤りです。


選択肢 3 は妥当です。

iPS 細胞の作製方法についての記述です。


選択肢 4 は妥当です。

ES 細胞の作製方法についての記述です。


選択肢 5 ですが

ES 細胞は、あらゆる細胞に分化できる多能性を有しますが、完全な個体を形成できる能力である全能性は有していません。選択肢 5 は誤りです。


以上より、正解は 3,4 です。

類題 105-14
https://yaku-tik.com/yakugaku/105-014/

参考 細胞の多様性と幹細胞の性質
https://yaku-tik.com/yakugaku/kise-5-3/

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