薬剤師国家試験 第110回 問92 過去問解説

 問 題     

ファントホッフプロットは直線を示す。このことに関する記述として正しいのはどれか。2 つ選べ。

  1. 温度の逆数に対して平衡定数の対数をプロットしたものである。
  2. 切片から標準反応エンタルピーが求まる。
  3. 傾きから標準反応エントロピーが求まる。
  4. 吸熱反応のとき、傾きは負である。
  5. 傾きが正のとき、温度が上がるにつれて平衡定数は大きくなる。

 

 

 

 

 

正解.1, 4

 解 説     

【ファントホッフプロットの基礎知識】
ファントホッフプロットは以下の式です。

van’t hoff 式ともいいます。平衡定数 K と温度 T の関係を示す式です。また、平衡定数と標準エンタルピー H0 や標準エントロピー S0 の関係を示す式ともいえます。

van’t hoff 式 の具体的な使い方は「異なる温度における平衡定数を2点~数点測定し、横軸 1/T 、縦軸を lnK としたグラフをプロットすることで、標準エンタルピー変化 ΔH0 や、標準エントロピー変化 ΔS0 を求める」です。


選択肢 1 は妥当です。

ファントホッフプロットでは「温度の逆数:1/T」を 横軸に、「平衡定数の対数:lnK」と縦軸にとります。


選択肢 2,3 ですが
T → ∞ の時 1/T → 0 となり、1/T → 0 の時、lnK = ΔS0/R です。従って、切片 ΔS0/R から求まるのは標準反応「エントロピー」ΔS0 です。標準反応「エンタルピー」ではありません。

また、傾きは -ΔH0/R です。従って、傾きから求まるのは標準反応エンタルピー ΔH0 です。標準反応「エントロピー」ではありません。選択肢 2,3 は誤りです。 



選択肢 4 は妥当です。
傾きは -ΔH0/R です。そして、吸熱反応であれば ΔH0 の符号は「正」です。R は気体定数なので、符号は 正 です。従って、傾きの符号は負となります。



選択肢 5 ですが
傾きが 正の時、lnK は 1/T が 大きくなるほど大きくなります。温度 T があがるほど 1/T は小さくなるため、選択肢 5 は誤りです。


以上より、正解は 1,4 です。

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