問 題
61 歳女性。身長 165 cm、体重 57 kg。左上葉非小細胞肺がん (腺がん、EGFR 遺伝子変異陰性、ALK 融合遺伝子陰性、PD – L1 < 50 %) で骨転移があり、Stage Ⅳ M1b 期と診断された。初回化学療法としてシスプラチン、ドセタキセル併用療法を導入することになった。
(身体所見及び検査値)
血圧 123/75 mmHg、白血球 4,500/μL、好中球 2,800/μL、Hb 11.5 g/dL、血小板 28.7×104/μL、血清アルブミン 3.8 g/dL、AST 10 IU/L、ALT 14 IU/L、血清クレアチニン 0.9 mg/dL、血清カルシウム 10.5 mg/L、CRP 0.4 mg/dL、心電図 異常なし
(全身状態)
パフォーマンスステータス(PS) 2
(既往歴)
うっ血性心不全
この患者の化学療法を開始するにあたり、薬剤師の確認及び提案事項として適切なのはどれか。2 つ選べ。
- 非ステロイド性抗炎症薬が服用されていないことの確認
- 中等度催吐性リスクの抗がん薬に対する制吐薬が処方されていることの確認
- シスプラチンの希釈液として生理食塩液が処方されていることの確認
- 通常の輸液によるハイドレーションを変更して、経口補液との併用によるショートハイドレーション法の推奨
- 腎障害モニタリングを投与開始後 3 日目より実施
解 説
選択肢 1 は妥当です。
シスプラチンと NSAIDs の併用で腎障害が増強されることがある事が知られています。
選択肢 2 ですが
シスプラチンの催吐リスクは高度です。また、ドセタキセルの催吐リスクは軽度です。共に中程度ではありません。選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 は妥当です。
シスプラチンは生理食塩液で希釈します。塩化物イオン濃度が低いと、活性低下するためです。
選択肢 4 ですが
シスプラチンの副作用軽減のために輸液が必要です。外来でシスプラチンを投与する際、腎機能・PS・年齢を考慮したうえで ショートハイドレーションを推奨されるようになっています。PS は 0 or 1 であることが求められます。
本問の症例は PS 2 (歩行可能で、自分の身のまわりのことはすべて可能だが、作業はできない状態) です。また、既往歴にうっ血性心不全があることからも、ショートハイドレーションを行うのは不適切と考えられます。選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 ですが
シスプラチンによる急性腎障害は投与から数時間で発生することもあり、投与後 3 日目より実施では遅いと考えられます。選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 1,3 です。
コメント