問 題
38 歳男性。体重 80 kg。数年前より動悸及び息切れを自覚し、最近では歯茎からの出血や不意の鼻血などで不安になったため近医を受診した。引き続き近医より紹介された大学病院にて骨髄穿刺を受けた。
病理検査の結果、骨髄異形成症候群と診断され、全身放射線照射に引き続き無菌病室で骨髄幹細胞移植治療を受けた。
移植後の移植片対宿主病及び真菌感染症の予防目的で以下の薬物が投与開始された。なお、タクロリムスの血中濃度は 15 μg/mL を目標とされた。
投与開始後2週間目にタクロリムス、ボリコナゾールは経口投与に変更となった。
骨髄幹細胞移植を実施した後の病棟担当薬剤師によるアセスメントとして適切なのはどれか。2 つ選べ。
- 投与開始直後の発熱に備えて頓用のイブプロフェンを準備する。
- タクロリムス水和物注射液は 1 mL/h の速度で投与する。
- ボリコナゾールは血中濃度を参考に用量を調節する。
- 移植片対宿主病を疑う所見が現れた場合はシクロスポリン注射液の追加を考慮する。
- 移植片対宿主病の発症を認めなくてもタクロリムスの投与は生涯必要である。
解 説
選択肢 1 ですが
免疫抑制に伴う感染症に注意が必要です。投与開始直後に発熱が見られた場合は、解熱して様子を見るのではなく、すぐに対処します。そのため「発熱に備えて頓用のイブプロフェンを準備する」のは不適切です。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 は妥当です。
0.03 mg/kg/日 × 80 kg なので 2.4 mg/日 です。24 時間かけて持続投与なので、2.4 ÷ 24 mg/h = 0.1mg/h です。調製されたタクロリムスは 0.1 mg/mL なので、1 mL/h となります。
選択肢 3 は妥当です。
108-333 で既出の内容です。
選択肢 4 ですが
シクロスポリンは、タクロリムス (外用剤除く) と併用禁忌です。選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 ですが
急性 及び 慢性の 移植片対宿主病 (GVHD) について問題なければ、多くの場合 移植後 6 ヶ月を目安に免疫抑制剤は終了となります。「生涯必要」ではありません。選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 2,3 です。
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