薬剤師国家試験 第109回 問314-315 過去問解説

 問 題     

大学病院で循環器内科を担当している薬剤師が、循環器内科病棟の医師から「糖尿病の治療薬である医薬品 A (カプセル剤) が心不全にも効果があるという報告を聞いたので、当院でも効果を検証することを目的として、無作為化二重盲検比較試験を実施したいと考えている。

認定臨床研究審査委員会に申請したいので、研究計画書について薬剤師の立場から追加や修正した方が良いところがあるかチェックしてほしい。」と依頼された。

研究の概要は以下のとおりである。なお、医薬品 A は日本では心不全の適応はない。

<比較試験の計画(一部抜粋)>

  • 対象患者:成人の心不全患者 (心機能は NYHA(注1) 分類 Ⅱ 度かつ左室駆出率が低下 (40 % 未満) した心不全 (HFrEF(注2)))
  • 除外基準:重症の糖尿病患者又は重症の腎機能障害患者
  • 評価項目:心不全で入院するまでの期間
  • 方法:心不全の標準治療に医薬品 A を追加服用する群 (介入群) と心不全の標準治療のみを行う群 (非介入群) に 1:1 の比で無作為に分け、36 ケ月それぞれの治療を実施する。両群とも被験薬は病院内で調剤する。介入群には医薬品 A を、非介入群にはプラセボ薬を投与する。
  • (注1) NYHA:New York Heart Association (ニューヨーク心臓協会)
  • (注2) HFrEF:heart failure with reduced ejection fraction

問314

薬剤師がこの計画を確認し、以下の追加内容を検討した。計画書に追加記載するのに適切なのはどれか。2 つ選べ。

  1. 服薬遵守率が設定した値より低い場合は、解析から除外すること。
  2. 副作用が発現した場合は、必ず試験を中止すること。
  3. 非介入群の患者には、医薬品 A と併用禁忌の薬剤は使用してもよいこと。
  4. 介入群の患者には、投与するのは医薬品 A であることを説明し、正しく服用させること。
  5. 医薬品 A とプラセボ薬は、外観に差がないカプセルに充てんしたものを使用すること。

問315

この研究は、臨床研究法の臨床研究のうち特定臨床研究に該当する。該当する理由として正しいのはどれか。1 つ選べ。

  1. 大学病院で行う研究であるため。
  2. 無作為化二重盲検比較試験であるため。
  3. 医薬品の適応外使用の有効性を検証する研究であるため。
  4. 医師主導で行う研究であるため。
  5. 侵襲を含む研究であるため。

 

 

 

 

 

正解.
問314:1, 5
問315:3

 解 説     

問314

選択肢 1 は妥当です。
服薬遵守率が低い参加者から収集した結果は、薬の評価とならないため解析から除外するのは適切です。

選択肢 2 ですが
一例として、副作用が「1 ~ 5% 程度に現れる軽い眠気」であれば、多くの場合治験は続行されると考えられます。「必ず」ではありません。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
治験参加者の中で非介入群の人の視点に立つと、もしも併用禁忌薬について知識がある場合に「A と併用禁忌薬剤が自分には使われている ということは 今飲んでいるのは A ではないということだ」という推測ができます。すると盲検でなくなってしまいます。このようなことがおきるかどうかはわかりませんが、治験デザインとして不適切です。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
これは医薬品 A ですよ と説明してしまっては盲検になりません。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 は妥当です。
外見からわからないようにします。


以上より、問 314 の正解は 1,5 です。

類題 104-316317
https://yaku-tik.com/yakugaku/104-316/

問315

特定臨床研究とは、臨床試験のなかでも、製薬企業等から研究資金等の提供を受け、医薬品等を用いる臨床研究や、未承認・適用外の医薬品等を用いる臨床研究です。平成30年4月1日に施行された「臨床試験法」に基づく研究です。研究実施者は、モニタリングや、利益相反等に関する基準遵守、並びに記録の保存等が義務付けられます。

ちなみに
モニタリングとは、適正な研究実施の確保のため、研究の進捗程度や、指針及び研究計画書に従って研究が行われているかについて、研究責任者が指定した者に行わせる調査です。

本問は「糖尿病治療薬を 心不全にも効果があるか試したい」という研究なので「未承認・適用外の医薬品等を用いる臨床研究」です。


以上より、問 315 の正解は 3 です。

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