薬剤師国家試験 第109回 問298-299 過去問解説

　問 題　　　　　

11 歳女児。小麦の食物アレルギーがあり、学校給食では除去食で対応し、学校にはアナフィラキシーショックに備え治療薬のエピペン注射液^(注) を常備している。

最近、夕食後にじん麻疹が身体の広範囲で現れるようになったため、かかりつけの医療機関を受診した。

(注) エピペン注射液：アドレナリン注射液

問298

本患者の食物アレルギーに関して正しいのはどれか。2 つ選べ。

1. 原因食物を摂取してから数日後に症状が現れることが多い。
2. じん麻疹以外にも、消化器症状や呼吸器症状などを発症しやすい。
3. 皮膚プリックテストのみで確定診断できる。
4. 皮膚症状にはアドレナリン β₂ 受容体刺激薬が用いられる。
5. 成長に伴い本症状は軽快する可能性が高い。

問299

エピペン注射液に関する記述のうち、正しいのはどれか。2 つ選べ。

1. 使用前に、注射液が褐色であることを確認する。
2. 使用後は、症状が改善しても必ず医療機関で診察を受けるよう指導する。
3. 自己注射は認められておらず、症状発現から 30 分経過後に医療機関で注射する。
4. 急激に上昇した血圧を下げる目的で使用される。
5. 大腿部外側に着衣させた状態でも注射できる。

 

 

 

 

 

　解 説　　　　　

問298

選択肢 1 ですが
原因食物摂取して 2 時間以内に症状が現れることが多いです。「数日後に症状が現れることが多い」わけではありません。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 は妥当です。
アナフィラキシーショックについての記述です。

選択肢 3 ですが
皮膚プリックテストは、アレルゲンを皮膚に付けて針で差して素早く拭くテストです。確定診断のためには「問診 又は 経口負荷試験による 特定食物摂取でアレルギー症状誘発されることの確認」も必要です。「皮膚プリックテストのみで確定診断できる」わけではありません。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
β₂ 受容体刺激薬は、呼吸器症状改善に用いられます。皮膚症状改善ではありません。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 は妥当です。
子どもの頃の食物アレルギーは、多くが成長に伴い徐々に原因食物が食べられるようになります。

以上より、問 298 の正解は 2,5 です。

参考　アナフィラキシーショックの病態生理、治療薬、注意点
https://yaku-tik.com/yakugaku/bt-4-5-2/

問299

選択肢 1 ですが
エピペン注射液は無色透明です。褐色であることに気がついたら交換します。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 は妥当です。
エピペン注射はあくまでも応急処置です。

選択肢 3 ですが
自己注射できます。また、本人が注射できない時に近くの保護者や教職員による代理注射もできます。「自己注射は認められておらず」は誤りです。

選択肢 4 ですが
低下した血圧を上昇させる目的で使用されます。「上昇した血圧を下げる目的」ではありません。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 は妥当です。
緊急の場合、服の上からでも注射可能です。

以上より、問 299 の正解は 2,5 です。

類題 101-63
https://yaku-tik.com/yakugaku/101-063/