薬剤師国家試験第109回問284-285 過去問解説

　問題　　　　　

43 歳男性。妻 38 歳、長男 4 歳。フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病のため大学病院血液内科にて化学療法中 (シクロホスファミド、ビンクリスチン、ドキソルビシン、デキサメタゾン) である。また、化学療法に伴う副作用軽減のため、処方 1 の薬剤を服用している。

右眼に霧視が発現したため、近隣の眼科を受診した。網膜浮腫と周辺部の血管炎があり、大学病院眼科にて精査のため入院となった。

化学療法実施中であり、眼底所見から、サイトメガロウイルス網膜炎と診断され、ガンシクロビル点滴静注 600 mg/day の投与が開始された。

眼内の炎症が改善したため、処方 2 の薬剤の服用による治療となった。

1 週間服用後、同一の内服薬を 14 日分処方され、退院となった。

初回面談における処方 1 の薬剤の服薬状況の確認時に、朝食後に飲む薬剤の数量が多いため、服用時間をずらして飲むことがあるとの申し出があった。

病棟担当薬剤師によるバルガンシクロビル錠の服薬説明として、適切なのはどれか。2 つ選べ。

前問で処方された内服薬は、注射剤であるガンシクロビルの消化管吸収を改善することによって経口製剤化した医薬品である。

有効成分の吸収に影響する因子を考慮するために、構造式及び物性値から主たる吸収改善の機構を推定した。最も適当なのはどれか。1 つ選べ。

正解．
問284：2, 4
問285：4

　解説　　　　　

選択肢 1 ですが
処方された薬剤の服用を中止してください、という説明は不適切です。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 は妥当です。
バルガンシクロビルの食事の影響についての記述です。

選択肢 3 ですが
バルガンシクロビルは抗ウイルス薬です。免疫抑制剤ではなく、生ワクチンとの相互作用も知られていません。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 は妥当です。
パートナーが妊娠する可能性のある男性が使用する場合、投与期間中及び投与後 90 日間は有効な避妊を行うよう指導します。

選択肢 5 ですが
飲み忘れた時に 2 日分飲むよう指導するのは不適切です。

以上より、問 284 の正解は 2,4 です。

バルガンシクロビルは、ガンシクロビルの L – バリンエステル (プロドラッグ) です。

アシクロビルと L – バリンがエステル結合を介して連結したバラシクロビルが、同様の「消化管吸収改善」の意図で作られたプロドラッグです。

そして
バラシクロビルは、小腸ペプチドトランスポーターの一種である PEPT1 により吸収された後、肝臓で加水分解されて薬効発揮します。

従って
バルガンシクロビルの主たる吸収改善の機構は ペプチドトランスポーターの基質となる化学修飾と推測されます。

以上より、問 285 の正解は 4 です。

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