問 題
6 歳男児。てんかん小発作の治療のため、以前からバルプロ酸 Na シロップ 5 % を服用している。進学に伴い、薬局薬剤師に服用回数を減らすことができないかとの相談があった。
この男児は、2 ケ月前に上気道炎にて受診時に、錠剤が処方されたが服用できなかったため、散剤に変更となったと薬歴に記載されていた。そこで、セレニカ R 顆粒 40 %(注) の処方への変更を主治医に提案することになった。
(注) セレニカ R 顆粒 40%:1 g中バルプロ酸ナトリウムを 400 mg 含有する徐放性顆粒
問280
バルプロ酸 Na シロップ剤から、セレニカ R 顆粒への処方変更への提案内容として、適切なのはどれか。1つ選べ。なお、分量は製剤量とする。
- 1 回 0.6 g 1 日 2 回 朝夕食後
- 1 回 0.75 g 1 日 2 回 朝夕食後
- 1 回 1.5 g 1 日 1 回 朝食後
- 1 回 3.0 g 1 日 1 回 朝食後
- 1 回 6.0 g 1 日 1 回 夕食後
問281
提案された製剤は、以下の添加剤を含み、図のような構造をしている。この製剤に関する記述のうち、正しいのはどれか。2 つ選べ。
添加剤:ステアリン酸カルシウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシビニルポリマー、エチルセルロース
- 水不溶性フィルムとしてヒドロキシプロピルセルロースが用いられている。
- 消化液によって膨潤するゲル基剤としてエチルセルロースが用いられている。
- 製剤内部の薬物が飽和濃度で、シンク条件が保たれる間は、薬物が一定速度で放出される。
- 製剤からの累積薬物放出量の時間推移は、Higuchi 式に従う。
- 薬物を放出した後の残渣が便中に排出される。
正解.
問280:3
問281:3, 5
解 説
問280
バルプロ酸 Na シロップ 5% の 1 日量 12 mL です。1mL = 1g なので、12g あります。5% シロップ 12g なので、バルプロ酸は 12 × 0.05 = 0.6g = 600mg 含まれています。
セレニカ R 顆粒は 1g 中に バルプロ酸ナトリウムを 400mg 含みます。従って、必要な 1 日量は 600 ÷ 400 = 1.5g です。正解は 2 or 3 です。
徐放性顆粒であり、服用回数を減らしたいという希望もふまえ、1 日 1 回の提案がより適切と考えられます。
以上より、問 280 の正解は 3 です。
問281
徐放化の手段は、大きく3種類に分類されます。外を別の物で包み込んで制御する(放出膜制御)か、全体を基剤と混ぜ込んでゆっくり放出させる(高分子マトリクスによる制御)か、その他の方法です。膜制御型は、リザーバー型とも呼ばれます。本製剤は膜制御型です。
薬物の放出速度は、膜の厚さに反比例します。吸収過程において、水が浸入してくるのですが、リザーバー内で薬物飽和状態にある間は、一定の放出速度(0 次速度)が維持されます。
マトリックス型製剤は、表面から徐々に薬物が放出されます。よって、薬物の拡散距離が時間とともに段々長くなっていきます。薬物の放出量(単位面積当たり)は、時間の平方根に比例するという Higuchi の式が知られています。
選択肢 1 ですが
ヒドロキシプロピルセルロースは、水溶性コーティングに用いられる製剤材料です。そのため水に溶けます。「水不溶性フィルム」には用いられません。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ですが
エチルセルロースは、徐放性コーティングに用いられます。消化液によって膨潤する製剤材料ではないと考えられます。選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 は妥当です。
一定速度で放出されることを 0 次速度ともいいます。
選択肢 4 ですが
Higuchi 式に従うのは、マトリックス型製剤です。本製剤は膜制御型です。選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 は妥当です。
残渣のことをゴーストピルといいます。
以上より、問 281 の正解は 3,5 です。
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