問 題
37 歳女性。生後 6 ケ月の男児あり。母乳哺育中。3 ケ月前に動悸、食欲亢進、体重減少が現れたため、かかりつけ医を受診したところ、甲状腺機能亢進が疑われ、精査の結果、バセドウ病と診断された。
プロピルチオウラシル錠内服による治療が開始されたが、投与開始 1 ケ月後の検査において、白血球数減少が認められたため、放射性同位体 131I を含む放射性医薬品 (ヨウ化ナトリウム (131I) カプセル) による治療に変更することになった。
問240
この放射性同位体 131I を含む放射性医薬品の服用前後の生活における注意点について、この患者への薬剤師の説明として適切なのはどれか。2 つ選べ。
- 服用 1 ~ 2 週間前から、海藻類を含む食品などの摂取を増やしてください。
- 服用後も母乳哺育を継続することができます。
- 服用 1 ~ 2 週間前から、ヨウ素含有うがい液の使用を避けてください。
- 服用後 1 週間は、子供との長時間の接触 (添い寝など) は避けるようにしてください。
- 服用後も、洗濯やお風呂は同居の人と区別する必要はありません。
問241
この患者の治療に用いる放射性同位体 131I を含む放射性医薬品に関する記述のうち、正しいのはどれか。2 つ選べ。
ただし、この放射性医薬品に含まれる 131I の物理学的半減期は 8 日、生物学的半減期は 80 日とする。
- 131I の壊変方式は β+ 壊変で、β+ 線と γ 線を放出する。
- 131I の実効半減期は、7.3 日である。
- この医薬品は、非密封小線源として治療に用いられる。
- 131I は体内に吸収されると、甲状腺だけでなく骨にも集積する。
- 脳腫瘍の治療にも用いられる。
正解.
問240:3, 4
問241:2, 3
解 説
問240
選択肢 1 ですが
ヨウ素含量の多い薬剤及びヨウ素含量の多い飲食物 (コンブ、ワカメ等)、甲状腺ホルモン、抗甲状腺剤は、治療あるいは検査に影響を与えるので、本品投与前後 3 日 〜 1 週間は禁止します。「海藻類を含む食品などの摂取を増やして」という説明は不適切です。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ですが
授乳を避けさせます。選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3,4 は妥当です。
小児を抱いたり、添い寝することは避けるよう指導します。
選択肢 5 ですが
3 日間 は、衣類の洗濯は他の人と別にするようにします。また、お風呂も最後に入り、入浴後直ちに浴槽などを洗浄するように指導します。選択肢 5 は誤りです。
以上より、問 240 の正解は 3,4 です。
問241
選択肢 1 ですが
131I の壊変方式は β– 壊変です。β+ 壊変ではありません。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 は妥当です。
実行(有効)半減期を Te、物理学的半減期を Tp、生物学的半減期を Tb とした時、1/Te = 1/Tp + 1/Tb が成立します。
選択肢 3 は妥当です。
非密封線源は、放射線を放出する同位元素 または これを含む物質のうち密封線源以外のものです。使用に当たり、体内外汚染の防止と 一般環境への汚染の広がりの防止 に注意が必要です。
選択肢 4 ですが
体内にとりこまれた放射性ヨードの多くは甲状腺に関係した細胞にだけ取り込まれます。「甲状腺だけでなく骨にも集積する」わけではありません。選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 ですが
脳腫瘍治療には適用がありません。選択肢 5 は誤りです。
以上より、問 241 の正解は 2,3 です。
コメント