問 題
56 歳男性。30 歳から印刷会社に勤務している。6 ケ月ごとに実施される特定化学物質健康診断を受診したところ、第一次検査の結果は以下のとおりであった。
(第一次検査の検査値)
身長 165 cm、体重 62.5 kg、体温 36.6 ℃、血圧 122/83 mmHg、脈拍 76 拍/分、AST 40 IU/L、ALT 46 IU/L、γ-GTP 95 IU/L
第二次検査として、腹部の超音波による検査等の画像検査、呼気中の一酸化炭素量の測定、血清間接ビリルビン及び血液中の腫瘍マーカーの検査を受けた。
(第二次検査の検査値 (一部抜粋))
血清間接ビリルビン 0.97 mg/dL (総ビリルビン 1.81 mg/dL、直接ビリルビン 0.84 mg/dL)、胆道がんの腫瘍マーカー陽性
画像検査で胆道に腫瘍が見つかった。
問230
本症例で陽性となった胆道がんの腫瘍マーカーはどれか。1 つ選べ。
- NSE (neuron specific enolase)
- PSA (prostate specific antigen)
- CYFRA 21-1 (cytokeratin 19 fragment antigen)
- CA 19-9 (carbohydrate antigen 19-9)
- SCC 抗原 (squamous cell carcinoma related antigen)
問231
この男性は第二次検査の結果から、最終的に胆道がんと診断された。その原因となった可能性が高いと考えられる化学物質はどれか。2 つ選べ。
正解.
問230:4
問231:1, 3
解 説
問230
選択肢 1 ですが
NSE(Neuron Specific Enolase) は、肺小細胞癌、神経芽細胞腫、神経内分泌系腫瘍等のマーカです。胆道がんの腫瘍マーカではありません。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ですが
PSA は、前立腺がんの代表的腫瘍マーカーです。胆道がんの腫瘍マーカではありません。選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 ですが
CYFRA 21-1 は肺がん、特に扁平上皮がんの判定に高い検出感度を示すマーカーです。胆道がんの腫瘍マーカではありません。選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 は妥当です。
膵胆道系がんとの関連が高い腫瘍マーカーといえば、CA 19 – 9 です。
選択肢 5 ですが
SCC 抗原は、子宮頸がん、食道がん、肺がんなどの腫瘍マーカーです。胆道がんの腫瘍マーカではありません。選択肢 5 は誤りです。
以上より、問 230 の正解は 4 です。
類題 105-57
https://yaku-tik.com/yakugaku/105-057/
問231
印刷業者と胆管がんの関連なので、ジクロロメタンや 1,2 ジクロロプロパン曝露が原因となった可能性が高いです。従って、選択肢 1,3 が妥当です。
ちなみに、選択肢 2 ですが
o-トルイジン(o-メチルアニリン)の構造式です。染料などの工業原料に使用され、N – 水酸化により代謝的活性化されて膀胱がんの原因となることが知られています。胆道がんの原因ではないと考えられます。選択肢 2 は誤りです。
選択肢 4 ですが
4,4′-メチレンビス (2-クロロアニリン) の構造式です。MOCA、あるいは MBOCAと略記されます。防水材に使われるポリウレタンの硬化剤として利用されます。膀胱がんの発がん性が知られています。胆道がんの原因ではないと考えられます。選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 ですが
ジクロルボスの構造式です。ジクロルボスは有機リン系の農薬です。胆道がんの原因ではないと考えられます。選択肢 5 は誤りです。
以上より、問 231 の正解は 1,3 です。
類題 102-130
https://yaku-tik.com/yakugaku/102-130/
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