問 題
89 歳女性。体重 40 kg。高血圧症及び慢性心不全に対して処方 1 で薬物治療を行っている。独居で入院拒否があるため、医師と薬剤師、看護師が訪問している。
最近、下腿浮腫が出現し、労作時の息苦しさや疲労感が強くなってきたため、血液検査を実施したところ、脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体 N 端フラグメント (NT – proBNP) 値が 3 ケ月前の 450 pg/mLから下記の検査値になっていた。
その後、訪問医は継続中だった処方 1 のうち、エナラプリルのみを中止して、新たに処方 2 を追加した。
問220
下図は、脳性ナトリウム利尿ペプチド (BNP) の生成と代謝の過程を示している。BNP は、mRNA からBNP 前駆体タンパク質として翻訳された後、切断されて血中に分泌される。サクビトリルが阻害する酵素ネプリライシンの作用部位は、切断 1 ~ 3 のいずれかである。
以下の記述のうち、正しいのはどれか。2 つ選べ。
- BNP と NT – proBNP は、主に心室から分泌される。
- NT-proBNP は、図のペプチド A である。
- BNP は、NT-proBNP よりも血液中での安定性が高い。
- ネプリライシンの作用部位は、切断 3 である。
- NT-proBNP は、BNP と同様に腎臓に作用して Na+ の尿中への排出を促進する。
問221
処方 2 の薬剤の服用によって生じる可能性が高いのはどれか。2つ選べ。
- 血中 TSH 値の上昇
- 高カリウム血症
- 血圧上昇
- 血中 NT – proBNP 値の上昇
- 脱水症状
正解.
問220:1, 4
問221:2, 5
解 説
問220
BNP 前駆体タンパク質 (134 残基) は、まず 26 残基のシグナルペプチドが外れて proBNP (108 残基) となります。そして、切断を受けて 32 残基からなる BNP が生成されます。この時切断された残りの部分が NT – proBNP です。
選択肢 1 は妥当です。
脳性ナトリウム利尿ペプチド (BNP) は、主に心室から分泌されるアミノ酸 32 個からなるホルモンです。また、NT-proBNP (ヒト脳性 Na 利尿ペプチド前駆体 N 端フラグメント) は、76個のアミノ酸で構成されており、やはり心室から分泌されます。
選択肢 2 ですが
NT – proBNP は 76 個のアミノ酸で構成されます。図で言えば、ペプチド B が該当します。選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 ですが
BNP は血中で不安定です。短時間ですぐ分解されてしまいます。一方、NT – proBNP は比較的血液中での安定性が高いという特徴があります。選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 は妥当です。
ネプリライシンは BNP を含む、様々なペプチドを分解する酵素です。
選択肢 5 ですが
NT – proBNP は、特に生理的活性を有しません。選択肢 5 は誤りです。
以上より、問 220 の正解は 1,4 です。
問221
サクビトリルが利尿促進なので「脱水」が生じる可能性は高いといえます。また、バルサルタンによるレニン-アンギオテンシン-アルドステロン系の阻害で 低アルドステロン による「高 K 血症」も可能性が高いと考えられます。
以上より、問 221 の正解は 2,5 です。
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