問 題
下表には薬物の肝抽出率及び血漿タンパク結合率を示す。これら 3 種の薬物の体内動態の変動に関する記述のうち、正しいのはどれか。2 つ選べ。
- ニカルジピンの肝クリアランスは、肝血流量による影響を受けない。
- ニカルジピンの定常状態における非結合形薬物濃度は、肝血流量が一定であれば、血漿タンパク結合率の変動による影響を受けない。
- フェニトインとテオフィリンの肝クリアランスは、いずれも肝固有クリアランスの変動の影響を受けやすい。
- 血漿タンパク質の減少による肝クリアランスへの影響は、フェニトインよりテオフィリンの方が大きい。
- フェニトインとテオフィリンの定常状態における非結合形薬物濃度は、肝固有クリアランスが一定であれば、血漿タンパク結合率の変動による影響を受けない。
解 説
選択肢 1 ですが
肝抽出率が 0.7 より大きい → 血流依存性薬物と考えられます。「肝血流量による影響を受けない」わけではありません。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ですが
血中において蛋白と結合していないフリーの薬物のみが肝組織へ移行します。肝血流量が一定で、肝機能が低下して薬物と結合するアルブミンが極端に減少した場合 = 血漿タンパク結合率が 極端に低下した 場合を考えます。
すると、定常状態における 組織に薬物が多く移行するため、同じ投与量であっても血中濃度は小さくなると考えられます。従って、影響を受けます。選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 は妥当です。
肝抽出率が 0.3 より小さい → 代謝依存性薬物と考えられます。代謝依存性薬物は、肝固有 CL の変動の影響を受けやすいです。
選択肢 4 ですが
血漿タンパク結合がとても大きい、例えば 99% だったりすると、血漿中で フリーな薬物は 1% です。で、血漿タンパク質が減少して、少しタンパク結合率が下がった場合を考えると、99% → 98% であっても、フリー薬物が 1% → 2% と「倍」になります。影響がとても大きいことがわかるのではないでしょうか。
従って、血漿タンパク結合率が 0.8 よりも大 である「フェニトイン」の方が、血漿タンパク質の減少による肝クリアランスへの影響は「大きい」と考えられます。「フェニトインよりもテオフィリンの方が大きい」わけではありません。選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 は妥当です。
肝固有クリアランスが一定ということなので、タンパク結合率の変化をふまえた上で変化がないと考えられます。
以上より、正解は 3,5 です。
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