問 題
図 1 ~ 4 は、化学物質 A、B、C の発がん作用を調べるために、マウスを用いて皮膚腫瘍 (皮膚がん) の発生割合について検討した論文に示されている結果である。
図 1 は、あらかじめ毛を剃ったマウスの背部皮膚に化学物質 A 又は化学物質 B を 1 回だけ塗布し、その後、同一部位に化学物質 C を 1 週間に 2 回ずつ塗布し続けた時の結果である。
図 2、3、4 は、化学物質 A、B、C を図 1 と同じ用量でそれぞれ単独で、毛を剃ったマウスの背部皮膚に 1 週間に 2 回ずつ塗布し続けた時の結果である。
これらの結果からわかる化学物質 A、B、C の発がん作用に関する記述のうち、正しいのはどれか。2 つ選べ。
- 化学物質 A には、発がんプロセスにおいてイニシエーターとしての作用はない。
- 化学物質 B には、発がんプロセスにおいてイニシエーターとしての作用はない。
- 化学物質 C には、発がんプロセスにおいてイニシエーターとしての作用はない。
- 化学物質 A には、発がんプロモーターとしての作用がある。
- 化学物質 B には、発がんプロモーターとしての作用がある。
解 説
【用語の基礎知識】
・イニシエーター:発がん性物質
・発がんプロモーター:単独では発がん性を示さないが、イニシエータと呼ばれる物質の作用を促進させる物質の総称
ーーー
さらっと書いてあるグラフですが、半年以上マウスをいっぱい育てつつ、化合物もいっぱい候補があったと思われます。きれいなデータをとれた素敵な結果です!
図1~4から
・化合物 A のみ塗り続けると皮膚がん発生
・化合物 B,C のみ塗り続けると皮膚がんなし
・A + C で A 単独よりも速く皮膚がん発生
・B + C で 少し A 単独よりも発生率が高い という結果が読み取れます。
ある化合物について
イニシエーター ◯、プロモーター ◯
イニシエーター ◯、プロモーター ☓
イニシエーター ☓、プロモーター ◯
イニシエーター ☓、プロモーター ☓ という 4 つの可能性が考えられます。これをふまえ、各選択肢を検討します。
ーーー
選択肢 1 ですが
図2より、A 単独で発がん作用を示します。イニシエーターとしての作用ありです。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2,3 ですが
これは共に正しい、とびつきたくなる選択肢ですが、 選択肢 2 は誤りです。図3、4より、B,C 単独で発がん作用を示さないように思えます。しかし、図1において 化合物 B+C でがん発生なので、どちらかはイニシエーターとしての作用を持っていたと考えられます。
さらに、図1の実験はあらかじめ1回だけ塗布したのが化学物質 A or B です。ここから A 「及び B」 はイニシエーターとしての作用があると考えられます。従って、選択肢 2 は誤りです。
A,B 共にイニシエーター作用があることから、化合物 A が「単独で発がん作用を示した」という点を改めて考えると、A はイニシエーター作用もプロモーター作用も有していたため、単独で皮膚がんができた。一方で、化合物 B はイニシエーター作用のみなので、B のみ塗布しても皮膚がん発生しなかったとわかります。
そして、B + C で A のみと同等の皮膚がん発生していることから、B はイニシエーター作用のみ、C はプロモーター作用のみと考えられます。従って、C にイニシエーターとしての作用がありません。※ C にもしイニシエーター作用もあれば、図4の結果と矛盾します。選択肢 3 は妥当です。
選択肢 4 は妥当です。
A はイニシエーター作用もプロモーター作用も有していたと考えられます。
選択肢 5 ですが
B はイニシエーター作用のみです。選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 3,4 です。
コメント