薬剤師国家試験 第109回 問135 過去問解説

 問 題     

下図は、化管法のPRTR制度における 2021 年 (令和 3 年) 度届出排出量・移動量の上位 10 物質を示したものである。

化管法:特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律令和 3 年度 PRTR データの概要-化学物質の排出量・移動量の集計結果- (令和 5 年 3 月) を基に作成

化合物 A ~ C は以下の ア ~ オ のような特徴をもつ化合物である。化合物 A ~ C の組合せとして正しいのはどれか。1 つ選べ。

  1. 化合物 A 及び C の届出排出量のほぼ全量が大気への排出、化合物 B の届出移動量のほぼ全量が事業所外への廃棄物としての移動である。
  2. ヒトの体内で化合物 A 及び C は酸化的な代謝を受け、それぞれの代謝物がグリシン抱合されて尿中に排泄される。
  3. 化合物 A 及び C には、室内濃度指針値が定められている。
  4. 化合物 B への曝露により、パーキンソン病様の症状が現れることがある。
  5. 化合物 C は、3 種類の異性体の混合物である。
  • 化合物A     化合物B       化合物C
  1. キシレン  亜鉛の水溶性化合物    ベンゼン
  2. キシレン  マンガン及びその化合物  トルエン
  3. ベンゼン  マンガン及びその化合物  キシレン
  4. ベンゼン  亜鉛の水溶性化合物    トルエン
  5. トルエン  亜鉛の水溶性化合物    キシレン
  6. トルエン  マンガン及びその化合物  キシレン

 

 

 

 

 

正解.6

 解 説     

【化合物 A,C について】
ベンゼン、トルエン、キシレンの構造は以下の通りです。これは基礎知識です。

わかりやすいのが、特徴 オ です。特徴 オ から、C がキシレンです。


特徴 イ ですが、「グリシン抱合」といえば「トルエン」です。
トルエン →  CYP 酸化的代謝受けて ベンジルアルコール → アルコールデヒドロゲナーゼによる酸化受けて 安息香酸 → グリシン抱合受けて馬尿酸 という代謝の流れは基礎知識です。化合物 A はトルエンとわかります。


特徴 エ 「曝露により、パーキンソン病様の症状が現れることがある」という記述から Mn と Zn のどちらかという判断は難しい印象です。ただ、選択肢の記述に違いがあります。試験本番での考え方の一例をあげます。

化合物 B について「亜鉛の水溶性化合物」という記述になっています。水溶性かどうかはひとまず保留し、亜鉛化合物として「塩化亜鉛」や「酸化亜鉛」が外用薬の成分として使われることを連想すれば、曝露で中枢症状が出るような性質ではないのではないか.. と推測できるのではないでしょうか。B はマンガン 及び その化合物です。


以上より、正解は 6 です。

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