問 題
2 種類の染色法を用いて細菌 A について調べた。染色法 1 (グラム染色) では明瞭な染色像が観察されなかったため、染色法 2 (抗酸染色) での染色を行ったところ、染色法 2 では陽性であった。染色法 1、2 の染色操作を図に示した。
細菌 A とこれらの染色法に関する記述のうち、正しいのはどれか。2 つ選べ。
- 細菌 A は、ペプチドグリカン層に加えて染色法 1 での染色に抵抗性の細胞壁成分を持っている。
- ペプチドグリカン層が厚い細菌では、クリスタルバイオレットとルゴール液でつくられた色素がエタノールで除去される。
- 高級脂肪酸やワックスに富む細胞壁成分を持つ細菌は、染色法 2 で染色されない。
- 細菌 A の細胞壁は、融点の低い脂質に富んでおり、加温すると石炭酸フクシンの透過性が増す。
- 染色法 1 の陽性細菌は青紫色、染色法 2 の陽性細菌は赤色に染まる。
解 説
【グラム染色の基礎知識】
細菌は、形態によって、球菌、桿菌、らせん菌に分類されます。また、グラム染色によって、グラム陽性菌とグラム陰性菌に分類されます。
グラム陽性は青紫色に、グラム陰性は、赤色に染色されます。これは細胞の外側の構造の違いを反映しています。共通構造として、ペプチドグリカンがあります。グラム陰性菌ではこのペプチドグリカン層が薄い代わりに、外膜と呼ばれる膜があります。外膜には、内毒素であるリポ多糖を含みます。ちなみに、細胞質膜と外膜の間はペリプラズムと呼ばれます。
選択肢 1 は妥当です。
細菌 A が何であれ、ペプチドグリカン層は有すると考えられます。また、問題文から明瞭な染色像が観察されなかったとあるため、染色に抵抗性の細胞壁成分を有すると思われます。
選択肢 2 ですが
ペプチドグリカン層が「薄い」グラム陰性菌では、グラム染色における脱色過程において、色素がエタノールで除去されます。「厚い」細菌ではありません。選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 ですが
選択肢 1 に記述があった「グラム染色に抵抗性の細胞壁成分」というのが、具体的にはロウ性脂質が多いという組成です。つまり、選択肢 3 の「高級脂肪酸やワックスに富む細胞壁成分を持つ細菌」は、グラム染色抵抗性です。従って、染色法「1」で染色されません。「2」ではありません。選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 ですが
結核菌などの抗酸菌細胞壁の特徴は、分子量の大きな脂肪酸であるミコール酸を含むことです。脂肪酸の融点は不飽和よりも飽和が高く、また、分子量が大きいほど高い傾向があります。従って、細菌 A の細胞壁は「融点の低い脂質に富んでいる」わけではないと考えられます。選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 は妥当です。
グラム陽性は青紫です。また、抗酸染色によって陽性であれば赤 (ピンク) に染まります。
以上より、正解は 1,5 です。
類題 107-119 細菌の細胞表面構造
https://yaku-tik.com/yakugaku/107-119/
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